江の島への近道 湘南モノレール株式会社

#11 湘南江の島駅周辺

 湘南モノレールが開業した50年前の風景と今の風景を比較して楽しむ「湘南モノレール沿線 今昔写真撮影隊」の旅。最終回の今回は、湘南江の島駅周辺を歩きます。

 目白山下駅と湘南江の島駅の間は、ほぼトンネル区間(片瀬山隧道:205m)です。トンネルを抜けた先は切り立った断崖で、崖の中腹を走る京急道路(現在は藤沢市道片瀬西鎌倉線)の上空をクロスして、モノレールは駅ビル5階にある湘南江の島駅ホームに吸い込まれていきます。

morikawa-photo11_01.jpg湘南江の島駅(昔)

morikawa-photo11_02.jpg湘南江の島駅(今)

 なぜ、湘南モノレールの終点駅が、このような「空中駅」になったのかについては、「湘南モノレール全線開通までの全記録」エピソード#36エピソード#37に書きました。
 湘南モノレールの各駅で、開業時と現在とで最も大きな変貌を遂げたのは湘南江の島駅でしょう。湘南江の島駅の駅舎の今昔写真を掲載します。

morikawa-photo11_03.jpg湘南江の島駅舎(昔)。「囲碁センター」や「キリン生ビール」の看板が見えます。駅1階にビアホール、3階に囲碁センターが開設されたのは1972年6月です

morikawa-photo11_04.jpg湘南江の島駅舎(今)

morikawa-photo11_05.jpg湘南江の島駅舎(昔)

morikawa-photo11_06.jpg湘南江の島駅舎(今)

 ちなみに、駅前の道路は、こんな感じでした。

morikawa-photo11_07.jpg湘南江の島駅前の県道(昔)

 よく見ると、商店街のアーケードの中に「大黒屋」の看板が見えます。これは、今も同じ場所で営業している菓子店の「大黒屋」さんです。
 「大黒屋」の向こうには、昔の横浜銀行のロゴマークも見えます。

morikawa-photo11_08.jpg上の写真をズームアップ

 念のため、1973(昭和48)年の地図で位置関係を確認すると、「大黒屋菓子店」「横浜銀行片瀬支店」などが記載されています(地図中央付近)。

morikawa-photo11_09.jpg1973(昭和48)年の江の島駅周辺の地図(提供:明細地図社)

 以上の情報から位置を特定し、「今」の写真を撮影するとこんな感じになります(すっかり日が暮れてしまいましたが......)

morikawa-photo11_10.jpg湘南江の島駅前の県道(今)

 さて、江の島エリアの湘南モノレール関連施設で、もう1つ重要な「片瀬荘」についても触れておきましょう。
 「片瀬荘」とは、明治の中頃、大蔵大臣等を歴任し、後に朝鮮総督在任中に逝去した曾禰荒助(そねあらすけ)の邸宅です。湘南モノレールは、この土地と建物を終点駅用地として、日立金属工業から購入しました。「湘南モノレール全線開通までの全記録」のエピソード#36参照

morikawa-photo11_11.jpg1968(昭和43)年の地図(提供:明細地図社)。「湘南モノレール片瀬事務所」が該当の土地

morikawa-photo11_12.jpg片瀬荘。台湾檜を輸入して造営した家屋や、数十本の松の大木をはじめとする樹木が繁茂する庭園などがあり、かなり価値の高いものでした

morikawa-photo11_13.jpg「東浜」バス停付近。門柱に「順天堂片瀬寮」とあります。「湘南モノレール片瀬事務所」の南側隣接地は1965(昭和40)年頃まで「順天堂片瀬寮」でした

morikawa-photo11_14.jpg右端に今もある江の島マンションが写っています。左端に写っている「シェル」のガソリンスタンドは、今の「江ノ島タクシー」営業所付近

 しかし、この場所に駅を建設するには、江ノ電の江ノ島駅構内上空をモノレールが通過しなければならず、それについて江ノ電の反対を受けることになりました。結局、この場所に駅を建設することは断念せざるをえず、事務所として使用後、1971(昭和46)年9月に手放しました。その後、終点駅の場所は紆余曲折を経て、現在の湘南江の島駅の場所に落ち着きました。
 現在、「片瀬荘」の跡地は、洲鼻南公園とマンションになっています。

morikawa-photo11_15.jpg「片瀬荘」の跡地は、洲鼻南公園とマンションになっている

 さて、本連載の最後の1枚は、湘南モノレールの設立母体となった日本エアウェイ開発が、1962(昭和37)10月に免許申請を行った江の島島内と片瀬西浜(現・新江ノ島水族館付近)を結ぶ約770mのモノレール路線(江の島海上路線)の完成予想図です。

morikawa-photo11_16.jpg江の島海上路線の完成予想図

 この路線は地元の反対で実現せず、その代わりに建設が検討されることになったのが、大船-湘南江の島間を結ぶ湘南モノレールでした。もし、江の島海上路線が実現していたならば、大船-湘南江の島間のモノレールが建設されることはなかったかもしれません。

LINE
Twitter
facebook
google+
hatenablog
森川天喜(今昔写真撮影隊)ポートレート
森川天喜(今昔写真撮影隊)
フリージャーナリスト。
現在、大磯町観光協会副会長、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。テレビ・ラジオにも多数出演。過去にNHK学園、玉川高島屋カルチャーにて鎌倉散策講座の講師を担当。2020年1月には、初の小説作品『ホワイト・ライオン』(幻冬舎)を上梓し、各種メディアで取り上げられる。その後、コロナ禍の中「湘南モノレール全線開通50周年記念誌」の執筆・編集にも取り組んだ。
著者のご紹介
mr.ブラーン
森川天喜(鎌倉殿と十三人の御家人)ポートレート
「鎌倉殿と十三人の御家人」のゆかりの地を歩く
森川天喜(鎌倉殿と十三人の御家人)
フリージャーナリスト
佐藤淳一ポートレート
乗らずにいられない、懸垂式モノレールの魅力
佐藤淳一
ドボク+動物のかけもち写真家
宮田珠己ポートレート
湘南モノレールはどのぐらいジェットコースターなのか
宮田珠己
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
宮田珠己(続編)ポートレート
5つの面白レールを1日で。ゆかいなのりもの大冒険!
宮田珠己(続編)
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
村田あやこポートレート
路上に潜む異世界を求めて ー湘南モノレール沿線 路上園芸探索ー
村田あやこ
散歩と植物好きの会社員
村田あやこ(続編)ポートレート
湘南モノレールから歩いていける森巡り
村田あやこ(続編)
散歩と植物好きの会社員
村田あやこ(変形菌編)ポートレート
ルーペの向こうのちいさな世界
村田あやこ(変形菌編)
散歩と植物好きの会社員
村田あやこ(大船系植物編)ポートレート
「大船系」植物と玉縄桜~知っていますか?大船生まれの植物たち~
村田あやこ(大船系植物編)
太田和彦ポートレート
大船で飲む
太田和彦
作家。旅と酒をこよなく愛する
八馬智ポートレート
土木構造物としての湘南モノレール鑑賞術
八馬智
ドボクの風景を偏愛する都市鑑賞者
西村まさゆきポートレート
湘南モノレールの昔と今を比べてみる
西村まさゆき
めずらしいのりものに乗るのが好きなライター。
西村まさゆき(続編)ポートレート
開業当時の古写真の場所はいったいどこか探す旅
西村まさゆき(続編)
めずらしいのりものに乗るのが好きなライター。
西村まさゆき(車両基地編)ポートレート
大人のモノレール車両基地見学記
西村まさゆき(車両基地編)
めずらしいのりものに乗るのが好きなライター。
大船ヨイマチ新聞ポートレート
よい街 オーフナ
大船ヨイマチ新聞
大船のフリーペーパー。昼は「良い街」夜は「酔い街」。
皆川典久ポートレート
地形マニアと鉄ちゃんの凸凹乗車体験記〜湘南モノレールに乗って〜
皆川典久
スリバチ状の谷地形を偏愛する地形マニア
皆川典久(続編)ポートレート
湘南モノレールに乗らずに
皆川典久(続編)
スリバチ状の谷地形を偏愛する地形マニア
能町みね子ポートレート
ほじくり湘南モノレール
能町みね子
肩書きに迷いつづけ、自称「自称漫画家」。散歩好き。
ドンツキ協会ポートレート
ドンツキクエスト in 湘南モノレール
ドンツキ協会
ドンツキ協会は東京の路地の町、向島を拠点に、袋小路『ドンツキ』の研究に取り組む団体。
大谷道子ポートレート
湘南モノレール運転士インタビュー 「運転する人どんな人」
大谷道子
ライター・編集者。
井上マサキポートレート
湘南モノレールの「まっすぐ路線図」を鑑賞する
井上マサキ
路線図を鑑賞するライター
井上マサキ(ぶら喜利)ポートレート
ぶら喜利
井上マサキ(ぶら喜利)
路線図を鑑賞するライター
鈴木章夫ポートレート
湘南モノレールバー人図鑑
鈴木章夫
誰かをちょっとだけびっくりさせるのが幸せ。かまくら駅前蔵書室(カマゾウ)室長
二藤部知哉ポートレート
ソラdeブラーンdeラーン
二藤部知哉
沿線在住のんびりブラーンランナー
いのうえのぞみポートレート
湘南フォトレール カメラを持って湘南モノレールに乗ろう!
いのうえのぞみ
モデル・タレントで世界一周を目指すカメラマン
大村祐里子ポートレート
フィルムdeブラーン
大村祐里子
フィルムカメラをこよなく愛する写真家
川口葉子ポートレート
モノレールdeカフェ散歩
川口葉子
都市散歩と喫茶時間を愛するライター、喫茶写真家。
松澤茂信ポートレート
湘南別視点ガイド
松澤茂信
東京別視点ガイド編集長。珍スポットとマニアのマニア。
川内有緒ポートレート
湘南トライアングルをめぐる旅
川内有緒
ノンフィクション作家
田中栄治ポートレート
MonoTube
田中栄治
地上と空のスピード感を追い求めている素人カメラマン
三土たつおポートレート
本物の車内アナウンスが楽しすぎた。
三土たつお
路上のなんでもないものの名前と特徴が知りたいライター
三土たつお(続編)ポートレート
湘南モノレール風景図鑑
三土たつお(続編)
路上のなんでもないものの名前と特徴が知りたいライター
杉浦貴美子ポートレート
食べる!湘南モノレール -湘南「地形菓子」制作奮闘記-
杉浦貴美子
地図・地形好きライター
今泉慎一ポートレート
〝もののふ隊〟駅前砦にあらわる
今泉慎一
旅・歴史・サブカル好き編集者兼ライター
ワクサカソウヘイポートレート
車窓の冒険
ワクサカソウヘイ
文筆業。主にルポとかコントがフィールド。
ワクサカソウヘイ(夜編)ポートレート
夜になると 湘南モノレールは
ワクサカソウヘイ(夜編)
文筆業。主にルポとかコントがフィールド。
半田カメラポートレート
大船観音の劇的楽しみ方
半田カメラ
大仏写真家
遠藤真人ポートレート
ジェットにGO!GO!!
遠藤真人
モノレールに敬礼!鉄道写真バンザイ!
石川祐基ポートレート
湘南モノレール「もじ鉄」旅
石川祐基
グラフィックデザイナー。鉄道と文字が好きな、もじ鉄。
大竹聡ポートレート
腰越で飲む
大竹聡
酒と酒場をこよなく愛するフリーライター
荻窪圭ポートレート
道標をきっかけに江の島まで古道を辿る
荻窪圭
老舗のデジタル系ライター。古道・古地図愛好家。
松本泰生ポートレート
湘南モノレールが見える階段を探して
松本泰生
階段研究家
大山顕ポートレート
湘南モノレールに乗って体長2kmのヤギを描く
大山顕
ドボクフォトグラファー
田代博ポートレート
湘南モノレールと富士山
田代博
富士山遠望鑑定士。ダイヤモンド富士ハンター。
北尾トロポートレート
町中華タウン大船をゆく
北尾トロ
町中華探検隊隊長
喜清みずほポートレート
失われた 記憶をたどる まぼろしの遊園地「江の島龍口園(えのしまりゅうこうえん)」
喜清みずほ
鎌倉観光ボランティアガイド
宮田珠己(龍口寺編)ポートレート
龍口寺の龍と、謎の仏像
宮田珠己(龍口寺編)
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
加門七海ポートレート
江の島怪談闇歩き
加門七海
作家
中野純ポートレート
江の島怪談闇歩き
中野純
負の走光性がある、闇歩きガイド
髙山英男ポートレート
暗渠deブラーン ~暗渠マニアが味わう湘南モノレール沿線
髙山英男
中級暗渠ハンター(自称)。
吉村生ポートレート
暗渠deブラーン ~暗渠マニアが味わう湘南モノレール沿線
吉村生
暗渠マニアックス
宮田珠己(空の駅編)ポートレート
湘南江の島駅は、日本一高い駅だった!?〜日本一、地上高が高い駅はどこか?
宮田珠己(空の駅編)
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
西村まさゆき(駅名編)ポートレート
湘南モノレール「駅名」ルーツをたどる旅
西村まさゆき(駅名編)
石山蓮華ポートレート
いい線いってる夜
石山蓮華
電線愛好家
中島由佳ポートレート
いい線いってる夜
中島由佳
ゴムホースマニア
加賀谷奏子ポートレート
いい線いってる夜
加賀谷奏子
サンポー編集部ポートレート
しょもたんの完全一致を探す散歩
サンポー編集部
散歩の横好き集団
中野純(鎌倉大横断編)ポートレート
鎌倉大横断ミッドナイトハイク
中野純(鎌倉大横断編)
負の走光性がある、闇歩きガイド
森川天喜ポートレート
湘南モノレール全線開通までの全記録
森川天喜
フリージャーナリスト
しょもたんポートレート
モノレールの運転士さんや駅員さんの話をきいてみよう!
しょもたん
湘南モノレールのマスコットキャラクター。
森川天喜(今昔写真撮影隊)ポートレート
湘南モノレール沿線 今昔写真撮影隊!
森川天喜(今昔写真撮影隊)
フリージャーナリスト
モノ喜利(井上マサキ)ポートレート
モノ喜利
モノ喜利(井上マサキ)
めざせ!最優秀ブラーン賞
ヴッパータール空中鉄道座談会ポートレート
ヴッパータール空中鉄道について思いっきり語る
ヴッパータール空中鉄道座談会
ヴッパータール空中鉄道に乗車した人たち
モノ散歩ポートレート
モノ散歩
モノ散歩
沿線の魅力が集結!
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日(宮田珠己)ポートレート
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日(宮田珠己)