プロローグにも記したように、湘南モノレールは、今から50年前の1970年3月7日に大船駅―西鎌倉駅間で部分開業を果たし、その翌年の1971年7月2日に湘南江の島駅までの全線が開通した。
半世紀前、なぜ湘南の地にモノレールが建設されたのか、また、なぜ通常の鉄道ではなく、モノレールだったのか、読者の皆さんは疑問に思ったことはないだろうか。本連載(全50回)の最初の10回くらいで、この疑問を解き明かしていきたいと思うが、まずは、モノレールというものが、そもそもどのような経緯から誕生したのか、その歴史を見ていくことにしよう。
1970年開業当時の湘南モノレール
子どもの頃、モノレールといえば「未来の乗り物」だった。アニメや図鑑に登場する未来都市には透明なチューブの中を走る自動車とともに、空を駆け抜けるモノレールが描かれていた。だから、1970年に湘南モノレールが開通したとき、沿線の人々は、街路の上空を駆け抜けるその姿に「未来」を見たに違いない。
この「未来の乗り物」というイメージからすると意外に感じるが、モノレールの技術的な歴史は古い。世界初の鉄道とされるイギリスのストックトンとダーリントンを結ぶ蒸気鉄道が開業したのは1825年だが、その1年前の1824年に、イギリス人のヘンリー・パーマーという人物が、木材のレールと馬力を用いたモノレールをロンドンのテムズ川畔にあったデトフォード造船所に敷設したという記録が残っている。レール上の車輪から左右に吊した籠をいくつか連結し、地上を走る馬に牽引させたという、このパーマー式モノレールが、記録に残るものの中では、おそらく最初のモノレールということになる。
その後、1888年にアイルランドに、リストール・バリーバニオン鉄道という蒸気機関車が牽引する延長約15kmのモノレールが登場しており、これが動力付きモノレールの先駆けとされる。
トピック モノレールとは?
モノトーン(単色)、モノクローム(単色の映画・写真)のように「モノ(mono)」という接頭辞は「1つの」を意味する。つまり、モノレール(MonoRail)とは1本レールの鉄道という意味である。モノレールが最初に登場したのは、2本レールを敷かなければならない通常の鉄道よりも建設費が安いという理由だった。
ちなみにモノレールには、1本の線路に車体が跨がる形式の跨座(こざ)型と1本の線路からぶら下がる形式の懸垂型の大きく2種類がある。