目白山下駅と湘南江の島駅の間にある山は、古くは「龍口山」、「目白山」などと呼ばれていた(龍口寺の山号である「寂光山」とも)。今は、山頂部の公園が「片瀬山公園」と名付けられているように、「片瀬山」と呼ばれることが多いように思う。モノレールの片瀬山駅からは距離が離れているが、片瀬山というのは、元々、特定の山を指すのではなく、この付近の丘陵一帯の呼び名だったようである。
ちなみに、現在は春の桜の名所として知られている片瀬山公園には、昭和初期に「江の島龍口園」という遊園地があり、6階建ての展望台や水鳥・猿・小鳥を飼育する小動物園があったという。(※)
江の島龍口園の6階建て展望台(提供:藤沢市文書館)
モノレール建設に際して、この片瀬山の部分は京急道路上を通すか、山にトンネルを掘って抜けるかが検討されたが、計画が二転、三転した末にトンネル案になったことは、本連載の#36~#37で記した。モノレールは、この全長205mの片瀬山トンネル内を74‰(パーミル)の急こう配で下る。
トンネルを出たところは地面から軌道面までが約15mもある崖になっていて、崖に張り付くように走る京急道路上空を通過して、湘南江の島駅のビルに吸い込まれるようにモノレールは到着する。
湘南江の島駅と300形車両
湘南江の島駅は駅ビルの5階(地上15.3m)がホームになっており、開業当時から景色の良いことを売りにしていたようだが、2018年12月の駅舎リニューアルオープンに際して、新たに「ルーフテラス」が設置された。富士山がどーんと大きく見えるほか、丹沢の大山や箱根の山々も一望できるテラスは、新たな観光スポットになった。
湘南江の島駅ルーフテラスからの眺望
※ 『~幻の遊園地~「江之島龍口園」の軌跡』(喜清みずほ 2019年2月25日)によれば、「江の島龍口園」が開園したのは1927(昭和2)年8月15日、閉園は昭和9年頃から昭和11年頃の間と考えられるとのこと。短期間営業していたにすぎず、まさに幻の遊園地だった。