大船駅周辺の用地買収が難航したのは、駅前整備計画とのからみによるところも大きかった。大船駅前整備協議会は、東京工業大学の石原舜介教授に駅前整備計画案の作成を依頼し、最初の案(第一次石原案)が1966年6月に提示された。しかし、この案に対しては、整備対象が駅前の狭い区域に限定されており、小さな商店がひしめき合うように建ち並ぶ、旧態依然とした駅前商店街全体の再編・活性化が望めないという意見が出されるなどした。
大船駅東口(改札を出てすぐ。京急道路の終点付近)
その後は、商店会から石原案とは全く別な独自案が提出されるなどの動きも見られ、国鉄を含む関係者の利害を調整しながら、数次にわたって石原教授の修正案が出された。そして、東口商店街全域を含む4.7ヘクタールを再開発の対象とする第五次石原案(最終案)が提示されたのは、湘南モノレールがまさに大船駅周辺の用地買収を進めていた1969年7月だった。この第五次石原案によれば、湘南モノレールの建設予定地も再開発事業の対象エリアに含まれていた。
7月16日付の神奈川新聞に次の記事がある。
大船駅東口の構想まとまる
来春四月に着工
鎌倉市 工費81億円で五年計画
根岸線の大船駅乗り入れに伴い、鎌倉市は五年前から石原舜介東工大教授に依頼して、大船駅東口前の市街地再開発事業法に基づく青写真の作製を急いでいたが、ようやく最終案がまとまった。この秋までに建設省の事業認定を受けたあと、来春四月から五カ年計画、工費八十一億円で着工する。だが、商店や住宅など個々の買収、補償の複雑で困難な問題が横たわっており、市では八月から積極的に駅前住民との懇談会を開き、具体的な新段階にはいるという。(中略)
駅前商店街など再開発事業面積は四・七ヘクタールにのぼる。ここには商店三百軒、住宅百六十戸がある。スーパー式、百貨店式、専門店式、食料品中心の買い物コーナー、娯楽センターなど、鉄筋十階から三階建ての七グループのビル街をつくり、そこへ現在の商店や住宅六百戸を収容していく。また、駅前に一千台収容の駐車場も設け、近代都市の機能をもたせる。工費は公共施設(道路や広場など)は国、県、市の負担、その他は市街地再開発事業法に基づく補助金、低利融資などをあてる方針。