さて、実際の建設工事は建設会社3社に分割発注して進められることになった。起点である大船から湘南深沢(約2.8km)までを鹿島建設、湘南深沢から西鎌倉(約2km)までを戸田建設、西鎌倉から終点の片瀬(約1.8km)までを大成建設が担当し、全体を三菱地所が監理する体制が組まれた。
そして、1967年12月に、大船駅-深沢駅までの基礎工事に関して、鹿島建設との間に総額3億5千万円の契約を締結。正式な工事施工認可前ではあったが、運輸省民鉄土木課内諾の下、第1期線(深沢-町屋間)の基礎工事が開始された。
ここで、実際の基礎工事の様子を撮影したビデオ(企画・撮影:湘南モノレール、鹿島建設)を見てみることにしよう。
湘南モノレール江の島線建設の記録(基礎工事)
【ビデオ音声】
ここがモノレールの起点になる大船。工事が始まっている。
この辺は地盤が悪く、所によっては岩盤に達するまでに、25m以上のPC杭が必要であった。
杭を継ぎ足しながら岩盤に届くまで打ち込む。
1本の支柱の基礎には、こうした杭が20本近くも打ち込まれる。
湘南モノレールは、その70%が道路の上を通る。道路のごく一部、しかも交通も止めずに工事ができるのも懸垂型の特徴である。
杭を打ち終わると、地表から約4mまで掘り下げる。杭の頭を切断して捨てコンを打つ。
市街地の工事で最も問題になる振動と騒音を避けるために、支柱の数もできるだけ減らした。
掘削が終わると、今度はあらかじめ決められた基準点に従って、支柱の芯を出していく。
基礎の上に乗る支柱、桁が工場で製作されるので、現場での基礎工事も特別な精度が要求された。
基礎と支柱をつなぐアンカーフレーム。支柱はこのアンカーフレームに固定されるのである。
支柱の中心が狂わないように慎重に据え付ける。
このアンカーフレームをコンクリートで固めると、基礎部分は完成する。
ビデオで解説されているように、工事で頭を悩まされたのが、軌道桁を支える支柱を立てる位置だった。昭和初期に建設された京急道路は、現在の自動車専用道路と異なり、道路に面して住宅や店舗が建てられており、自転車や人の往来もある一般道路と変わらない状態だった。しかも、道路幅は5.5~8mほどしかなく、道路・水路などと平面交差する場所も多数存在した。
当然のことながら、民家・商店の門前や道路・水路との交差部に支柱は立てられず、また、架設・埋設されている電気・水道・電話線や都市計画道路の予定地に規制される箇所もあった。したがって、支柱の位置は構造強度の面よりも、むしろ、こうした立地条件で決められる部分が多かった。さらに、工事中、振動・騒音などの苦情をできるだけ少なくするために、市街地では基礎工事の箇所をできるだけ少なくする必要もあった。
こうした諸条件をクリアするために、支柱間隔はできるだけ大きくして、支柱の数を減らすことに努めた。結果、直線部の支柱間隔は最大36m、曲線部の最小間隔は18mとなった。(※)
※ 日本モノレール協会が運輸省委託により取りまとめた『都市交通に適したモノレールの開発研究 報告書』は、懸垂型モノレールの支柱の標準間隔を30mとしている。