さて、今回からいよいよモノレール建設の話に入る。
鉄道の建設事業において最重要なのは路線選定、つまり線路をどこに通すかということである。湘南モノレール路線の大部分は京急道路上空を通るものとして計画されたが、この道路は最小曲線半径25m、最急こう配88‰(パーミル ※1)という箇所が存在し、いくらサフェージュ式モノレールが曲線やこう配に強いとはいえ、この数値のまま路線を敷設すれば十分な性能と乗り心地を確保するのは難しい。そこで、車両の所要馬力の余裕と平均速度の向上などを考慮して、
最急こう配:74‰(参考:箱根登山鉄道線の最急こう配は80‰) 最小曲線半径 本線:90m/駅構内:50m |
という基準を設け、この範囲に収まるよう、曲線やこう配を修正しながら京急道路上空を通すことにした。
具体的な路線としては、大船駅から鎌倉山付近までは、ほぼ京急道路上を進み、鎌倉山付近も計画初期の段階では、京急道路上を通す計画だった。しかし、鎌倉山付近は、急こう配と急曲線が連続していることや、道路に沿って植えられた桜並木が有名な風致地区であることから住民の反対が起きるなどし、のちに、トンネルを通す計画に変更された。
湘南モノレール計画路線(1965年11月「設立目論見書」策定時)
大船駅から西鎌倉駅付近までの路線は比較的早い段階で決定したが、その先は、終点の片瀬エリアの用地問題が難航し、路線の確定が遅れた。
途中駅の設置場所は、本路線は単線であるため、運転ダイヤ上、最もロスの少ない位置に交換(すれ違い)駅を設置しなければならなかった。しかも、駅は、ほぼ水平に近い場所という条件(※2)を満たし、かつ利用客にとって便利な場所でなければならない。これらの諸条件を考慮して、最終的に4つの交換駅(富士見町、湘南深沢、西鎌倉、目白山下)と2つの単線片側ホームの駅(湘南町屋、片瀬山)を設置することになった。
※1 ‰(パーミル)は1/1000。例えば、30パーミルは1000m走るごとに30m上る坂ということになる。
※2 地方鉄道建設規定第15条に、駅のこう配は原則として5‰まで、特別の事由がある場合に10‰までとする規定がある。