京急電鉄に新会社(湘南モノレール㈱)の経営主体になってもらうのは無理としても、少なくとも新会社の経営に参加してもらわなければならない。三菱グループ内部の空気を見れば、これが湘南モノレール建設計画を進める上での絶対条件と思われた。
では、京急電鉄には、どの範囲で経営参加を要請すべきか。その内容として考えられたのが、湘南モノレール㈱の資金面、総合計画など経営の基本的な部分に対する最終的な責任は日本エアウェイ(およびその背後にいる三菱3社)が負うが、京急電鉄には鉄道運営の中心である運転関係、鉄道営業実務等の中核となってもらい、その範囲の責任を持ってもらおうということであった。
モノレールの建設用地(京急道路)を貸してもらう上に、そのようなことまで頼むのは、少し虫が良すぎるようにも思われたが、この条件を盛り込んだ提案書を1964年12月21日付で、京急電鉄の佐藤晴雄社長宛に送ったところ、年明けの1月19日付で回答が送られてきた。その内容は以下の通りであり、日本エアウェイ側からの提案を概ね了承し、一部補足する形になっていた。
- 当社(筆者注:京急電鉄)は、湘南モノレール株式会社の設立に参加し、該会社の鉄道運営の中心となる。なお、鉄道運営の中心となるために常務取締役の役員を出す。
- 貴社(三菱三社を中心とする)は、該会社の資金面、総合計画を担当し、そのため代表取締役等の役員および職員を供出する。
- 資本金は、設立時5億円、営業開始時5億円と2回にわたり募集する。第1回は貴社(三菱三社を中心とする)と、当社にて3億円を引受け、当社は5,000万円とする。
- 当社の大船/竜口寺間の専用道路中、当社所有分の土地にモノレール建設ならびに運営のため、該会社は、土地の賃借権を設定し、これに対し当社に5,000万円を支払う。また賃借料として、運賃収入の1%を支払う。ただし、年500万円を下らない額とする。
- 当社の現行バス運行に支障ないよう建設ならびに営業が行われること。
- 将来、該会社の経営を健全に伸長するため、建設費を希少にするよう貴社(三菱三社を中心とする)側は極力努力する。
京急佐藤社長から日本エアウェイ多賀社長宛の回答書簡(複写)
このうち、とくに重要なのは、⑴と⑵である。これによって、新会社である湘南モノレール㈱の経営の基本的部分については三菱3社が責任を持ち、一方、鉄道運営の実務的な部分については京急電鉄が責任を持つという協力体制を築くことが合意されたのである。