午後2時、無事に石川さんが再合流。間口は狭いが『石狩亭』には2階があり、思いの外ゆったりできる。壁にはおすすめメニューがあちこちに貼り出され、目移りしてしまう。腹ペコ野郎の涙腺を緩ませずにはおかない平日15時まで麺類に半ライスサービス、飯類の大盛りサービス。また、たっぷりキノコ丼など、他店では見かけない期間限定物も用意されている。
だが焦ってはいけない。こういうときはメニュー表をじっくり見て、店の特徴をつかむことが肝心だ。
『石狩亭』の場合、長時間営業で、夜は飲み屋風になるとすれば、アルコール類とつまみメニューが充実していることは想定内。メニュー表を見ても、麺類や飯類の前に単品がずらりと並んでいる。人気メニューには印がつけられており、どれを推しているのかもわかりやすい。
(値段は9月時点の金額です。今後変更される場合があります。)
しかし、僕がそれ以上に注目したのは単品より先に載っている"北海道ラーメンの部"だった。わざわざ麺類と分けている。そこには意味があるはずだ。店名が石狩川からとったものだとすれば、店主は北海道と関わりがあると考えるのが自然だろう(この日、ご主人は不在だったが、ほかからの情報で北海道出身だとわかった)。その筆頭に挙げられているのが北海道味噌ラーメン。これは外せない。石川さんの推薦は、おつまみメニューの皿ワンタン。これに麻婆丼を加えることにした。
これがベストチョイス。濃厚スープの北海道味噌ラーメンは本場の味を彷彿とさせるものだし、麻婆丼も3人で奪い合いになるスパイシーな味だった。トドメは見るだけでビールが飲みたくなる、ボリュームたっぷりの皿ワンタン。厚めの皮の中から肉汁がブシュッ。これには石川さんはもちろん、宮田さんと僕も箸が止まらない。
ふと見渡すと、この店はスタッフが若い。営業時間が長いので、町中華にありがちな家族経営ではなく、アルバイトも雇っているだろう。客層も20代から40代あたりのサラリーマンがメインではないだろうか。
もしかすると、こういう店は町中華らしくないと感じる人がいるかもしれないが、それは違う。
いまでこそ、家族経営でこじんまりやっている店が増えたが、チェーン店やファミレスがそれほどなかった'70~'80年代の町中華はこんな感じだったのだ。現在、高齢になった店主の多くは、30代で店を開き、出前だけで生活が成り立つほどの忙しさを経験している。従業員を雇い、修行後はのれん分けして独立させる店もたくさんあった。僕は学生時代にそういう店で食事をしていたので、『石狩亭』にいるとその頃を思い出してしまうのだ。
さらに、個人的にうれしかったのは、ショップカードに<町中華のレジェンド>と書かれていたこと。創業40年以上のこの店が気軽に使っているのを知り、町中華という呼び方が定着してきたのを実感することができた。
●石狩亭
営業時間 11時~深夜1時半(ラストオーダー1時)
定休日 水曜日
住所 鎌倉市大船1丁目5ー4
電話 0467-44-5151