ローカル愛漂うジェラテリア「The Market SE1」
このエリアの隠れ家的お宝カフェたちは、ビーチ沿いではなくちょっと陸地に隠れているのだな。海をめざす観光客よりも、地元の人々に愛されているカフェなのだ。
そんなことを思いつつ、のんびりと3軒目のお店へ向かう。今年で11年目を迎えた「The Market SE1」は、小さな空間に鮮度の高いおいしさと物語がたっぷり詰まったジェラテリアだ。
ショーケースの中には定番のジェラートと、地元や近郊で採れた旬の果実のジェラートが並んでいる。さあ、どれにしよう?!
「神奈川キウイ」、小田原の八重桜の塩漬けを使った「ほんのり塩さくら」など、魅力的すぎてそわそわしてしまう。
結局選んだのは定番の「山のみるく」と、季節限定の「完熟いちご」の2フレーバーカップ(540円)。
上品な甘さの「山のみるく」には柔らかくすっきりしたミルキー感があり、飽きのこないおいしさだ。色彩も美しい「完熟いちご」は、海老名の武井いちご園から届く摘みたてのいちごで作る名作。単なる甘酸っぱさだけではない奥行きを感じる。
「牛乳は島根県の木次乳業のノンホモ・パスチャライズ牛乳を使っています。木次乳業さんは放し飼いにしていて、牛たちは朝、牛舎から出て山で自由に草を食べるんです。さっぱりした風味なので、他の素材ともあわせやすい」
そう教えてくれたオーナーの新安夫さんは、東京・赤坂や西麻布の高級和食店で活躍後、イギリスに渡ってF1レーシングチームの専属シェフに就任したという経歴の持ち主。聞いているだけでちょっとわくわくする。
「チームといっしょにいろいろな国の人に接するのが楽しかったですね。そんな日々の合間に、ロンドンのアイスクリーム屋を食べ歩いて、気がつけば今ここに...(笑)」
アイスクリーム作りは独学だが、インテリアにイギリスのエッセンスが入っているかもしれない、と新さん。小さなイートインコーナーに置かれた椅子は70~80年前のイギリスの小学校で使われていたものだという。
窓のすぐ前を江ノ電の緑色の車両がゆっくりと通過していく。まるで水槽の中から外の世界を眺めているような気分になる。
「この眺めがあるから、お客さんも僕も飽きなくて楽しい。観光客があまり来ない場所なので真冬と雨の日は本当に静かです。雨の日の江の島なんて、と思うかもしれないけど、ここでジェラートを食べて、新江ノ島水族館に行くというコースもいいですよ」
やがて入ってきたのは、ご近所さんらしい女性たち。白ワインとピッツァを注文してカウンターに横に立ち、新さんとのおしゃべりが始まった。いかにもローカルらしい、素敵な日常の光景だ。
The Market SE1(ザ・マーケット・エスイーワン)
神奈川県藤沢市片瀬海岸1-6-6
TEL 0466-24-8499
11:30〜18:00 定休日:月曜日(12月〜3月末まで月・火曜日休)