一昨年の年末に東京から神奈川・逗子へ引越し、湘南モノレールの始発駅でもある大船が、一気に身近な街になった。
駅の近くには人が行き交い、活気のある商店街や飲み屋がひしめく。山の上を見ると半身の大船観音が鎮座しているし、かつては松竹の撮影所もあった。
今まであまり意識していなかったけれど、知れば知るほど味わい深そうな街・大船。
あるとき何気なく本を読んでいたら、そんな大船で独自に品種改良された植物があると知った。その舞台となったのは「大船フラワーセンター」らしい。
思わず興味が湧き、早速大船フラワーセンターへと出かけることにした。
大船フラワーセンターは、神奈川県内の観賞植物の生産振興と花卉園芸の普及を目的とし、1962年に「神奈川県立フラワーセンター大船植物園」として開設された。2018年4月からは株式会社日比谷アメニスが指定管理者となり「日比谷花壇大船フラワーセンター」としてリニューアルオープンした。
大船フラワーセンターの場所にはもともと、大正時代から続く神奈川県の農業試験場があった。この農業試験場時代に「大船」の名前を冠した芍薬や花しょうぶなどが独自に品種改良され、それらは「大船系」と呼ばれる。
また1969年には、園内にてソメイヨシノと多品種の桜の自然交雑によって、ソメイヨシノよりも開花が早い桜が誕生した。その後周辺の地名にちなみ「玉縄桜」という名前で品種登録された。
現在も園内で「大船系」の芍薬や花しょうぶや「玉縄桜」をはじめ、国内外から収集した約3000種もの観賞植物を楽しむことができる。 大船ゆかりの植物がこんなにあるなんて、知らなかった。 大船フラワーセンターへ行くには、湘南モノレールの大船駅または富士見町から歩いていくことができる。 せっかくなのでモノレールに乗り、大船の一駅隣の富士見町で下車する。 富士見町駅は最近改修工事が行われ、上りは2017年3月、下りは2019年3月にバリアフリー化工事が完了した。この工事に伴い登り・下りホームともエレベーターが設置され、ベビーカーやご高齢で階段の昇り降りが困難な方も駅を利用しやすくなった。
ピカピカの駅舎に名残惜しく別れを告げ、外に出る。駅の周辺は高い建物がなく、民家や小さなビルが並ぶ。そんな静かな風景の中を時折ゴオォ・・・とモノレールが飛んでいく。そのギャップがたまらなくシュールだ。
レトロフューチャーな風景を楽しみながら、「天神下」という交差点で右に曲がり、住宅地の中を抜けていく。国道304号線まで出て「鎌倉武道館」と「鎌倉市山崎浄化センター」の間の橋を渡り、柏尾川を越えると大船フラワーセンターが見えてくる。
<続く>
参考文献:
・東京新聞 2019年3月7日号
・『神奈川県立フラワーセンター大船植物園のわくわく花散歩』(熊坂一夫)
・『植物園からの便り 開園四十周年を記念して』(神奈川県立フラワーセンター大船植物園)
・『玉縄桜に魅せられて』(玉縄桜をひろめる会)