●経過
湘南モノレールのWEBサイト「ソラdeブラーン」の編集担当者よりメールがありました。湘南モノレールの湘南江の島駅に富士山の見えるルーフテラスが完成したのを記念し「富士山とモノレールをいっしょに撮影できるスポット」を探して欲しいというものです。
私は、各地から富士山を眺め、撮影しています。乗物から見る富士山(車窓富士と言います)も対象です。今までに撮影したものは、小サイト「車窓富士インデックス」にまとめています。湘南モノレールから見る富士山もいずれ整理しようと思っていました。ただし、今回のリクエストはモノレールから見た富士山ではなく、モノレールと富士山です。
東海道新幹線と富士山は、何か所かで撮っており、ダイヤモンド富士の時のものも何点かあります。ただ、「鉄分」はそれほど高くないので、湘南モノレールと富士山を一緒に、という発想はありませんでした。
とは言え、なかなか面白そうなテーマではあります。地図を使えば机上である程度想定もできそうです。実は、メールが届くちょっと前に、湘南江の島駅のルーフテラスからダイヤモンド富士を撮影し、会社宛に連絡をしたばかりでした(ダイヤモンド富士については、「ダイヤモンド富士撮影一覧」にまとめています)。そのこととは関係はなかったのですが、これも何かのご縁と思いチャレンジすることにしました。
●情報収集
今の時代、まずはインターネット検索です。またフェイスブックやツイッターなどSNSも使い情報収集につとめました。
インターネットで「湘南モノレール富士山」と検索すると、湘南モノレールから見る富士山の情報が多く出てきますが、「富士山と湘南モノレール」という梶原住宅から富士山と湘南モノレールを撮影した動画がヒットしました。2019年1月3日に撮影されたものです。
またフェイスブックでは直接役立つ情報は入りませんでしたが、ツイッターからは、JR線と県道304号線が交差する「小袋谷跨線橋」が可能性があるのではないかという情報を得ました。その情報を寄せてくれたのは、実は私が地図学を講義している大学の学生でした。大船に住む鉄道ファンの友人に確認した上での情報とのことでした。グーグルストリートビューの画像も添えられていました。それには富士山は写っていませんでしたが、十分可能性を示すものでした。
●デジタルマップの利用
こうした情報はもちろん有益ですが、地図を使って見当をつけることもできます。その時に使える地図が「富士山可視マップ」です。富士山が見える地域を地図化したものです。この方法を考え出したのは1980年代の半ばでした。山岳雑誌の依頼で、富士山が見える一番遠い場所を地図から割り出したのですが、その過程で思いついたのです。地球の丸さにより、富士山が見える範囲は限られます。また近くても手前に富士山を隠す山があれば見えません。ピタゴラスの定理を使ったちょっとした計算式を作り、地図からデータを読み取り、この場所は見える、見えないという計算を繰り返し、富士山が見える地域を地図に表しました。その報告はWebに登録してありますので、興味のある方はご覧になってください(「研究/富士山頂から展望可能な山と地域」http://yamao.lolipop.jp/tenbo/1986/gakujin.htm)。
当時は紙の地図しかなく、値を読み取り計算もパソコンではなく電卓を使った手計算で、大変な手間と労力がかかりました。その後地図もデジタルの時代になり、今はデジタルの地形データを利用して、富士山可視マップを描けるようになりました。「カシミール3D」という地図ソフトが代表的なものです(カシミールという名称は、可視マップを見る、に由来しています)。そのソフトで作成した可視マップをインターネットで閲覧できる「富士山ココ」というサイトも(一財)日本地図センターが公開しています。「富士山ココ」については私も作成に関わっています。
地図1(カシミール3Dで地理院地図などを使用)
地図1がカシミール3Dで作成した富士山可視マップです。ピンクの部分が富士山が見えるエリアです。湘南モノレールと一緒に見るのですから、東側のエリアで建物や樹木に邪魔されない場所を見つければよいのです。可視マップは地形データのみで計算するので、ピンクに塗られていても建物や樹木により見えなくなるところがかなり沢山あります。その点ご注意ください。グーグルストリートビューの画像がある地域では実景がわかるので、富士山が写っていなくても、ここからはダメだろうと見当をつけることはできます。こうして可視エリアを絞り込むことが可能になります。