江の島への近道 湘南モノレール株式会社

湘南モノレールに乗って体長2kmのヤギを描く(2)

■好奇心がGPS地上絵を損なう

前回、第1回目をお送りしたGPS地上絵「鎌倉ヤギ」のレポート。その続きだ。

この不思議な遊びは「第3の移動」だと書いた。目的地まで効率よく進むのではなく、かといって散歩のように自由でもない。だからこそ発見があり、楽しいのだ、と。

しかし一方ではがゆいこともある。興味を引くものが見えても、そこがコースでない限り見に行くことができないのだ。

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たとえば桜。ちょうど季節だったので、コースのあちこちに咲き誇る並木が見えたが、近寄れない。このもどかしさは「GPS地上絵あるある」だ。

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この不自由さに業を煮やしたのが宮田さんだ。おそらく参加者の中で随一の好奇心の持ち主である宮田さん。興味を引くものがコース上にあるうちはよかったのだが。

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どうしても気になる祠があって、ぼくの制止もきかず、ついにコースから外れてしまう一幕があった。これでは、いくら尊敬する宮田さんといえども「GPS地上絵師」を認定するわけにはいかぬぞ(師匠気取り)。

■「海へ出るつもりじゃなかった」

さて、今回の描画の最大の特徴は、海岸がコースにあることだ。スタート/ゴール地点の頭部分はちょっとした丘陵地だが、足先はビーチ。実に鎌倉らしい海の近さ。

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山を下って海岸へ。ヤギを描いているだけのはずが、春の海に。「海へ出るつもりじゃなかった」という言葉が脳裏をよぎる。長年GPS描き初め地上絵を描いてきたが、海岸を使ったのは初めてだ。

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ふと思ったのは、現場に何も残らないGPS地上絵だが、海岸なら足跡を残すことができる。たとえば雪が積もった日にやれば、現場に実際に残る巨大な絵が描けるかもしれない。

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(c)OpenStreetMapへの協力者

うららかな春の湘南海岸。しかしただのんびり行く、というわけには行かなかった。きれいに絵を描くことが何よりも優先されるGPS地上絵だ。ここでも一筋縄ではいかない。

上の地図の矢印部分。地図で設計したときは「横断歩道もあるしすんなり海岸に出られるだろう」とふんでいた。

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ところがいざ現地に来てみたら、ごらんおとおり。壁だ。

ここで妥協するとヤギの足がへんになってしまう。乗り越えるべし。

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さいわい高い壁ではなかったのでなんとかまっすぐ進むことができた。大人になるとこういうことしないよね。こういうハプニングもまたGPS地上絵の楽しみである。

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海での休日を楽しむファミリーの横をもくもくと歩く一団。彼らもまさか自分たちがヤギの足にテントを張っているとは思うまい。

■道が通れないということはよくある

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そして足が終わったら、次はお腹を描きにふたたび山へ。せっかくだから海岸でのんびり、とかそういうことをしている暇はないのだ。GPS地上絵は真剣勝負。

海岸の壁はハプニングというほどのことでもなかった。ほんとうのハプニングは「現地行ってみたら道が通れない」というもの。これはGPS地上絵ではよくあること。今回もあった。場所は後ろ足の付け根のあたり。

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地図上では通れる雰囲気だったのだが、ご覧のように私道につき通行禁止とある。

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現場で急遽会議。ここで変なヤギにならないように別のルートを見いだせるかが重要。

こういうことは毎回必ず起こる。工事中だったり、道がなくなってたり。絵のバランスを考えて、場合によってはこの後のルートを全体的に見直さなくてはならないこともある。

今回は幸いなことに、すぐ横に平行する道があったので、そこを通ることで解決できた。よかったよかった。

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大山顕
ドボクフォトグラファー/ライター、そしてGPS地上絵師。主な著書に『工場萌え』『団地の見究』(共に東京書籍)、『ショッピングモールから考える――ユートピア・バックヤード・未来都市』(東浩紀との共著、幻冬舎新書)、『立体交差/ジャンクション』(本の雑誌社)など。
https://twitter.com/sohsai
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