江の島への近道 湘南モノレール株式会社

(5)海が見える階段を経て、湘南江の島へ

 2回目の訪問でも最後まで辿りつけなかったので、3月中旬にもういちど訪れた。3回目は片瀬山駅からスタート。このエリアも津西2丁目、腰越5丁目などに魅力的な階段がいくつかあるが、全てを紹介するときりがないので、ここでは津西2丁目の急階段と、腰越5丁目のS字型階段、そして終点の湘南江の島駅近くにある龍口寺境内の階段を挙げる。

13.片瀬山駅南側の急階段

 津西2丁目の急階段は、片瀬山駅の南側の戸建て住宅地に造られたものだ。まとまった住宅として造られた一角で、街区は整然としているが、かなりの傾斜地であるためか急な階段が造られている。

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片瀬山駅南側の急階段
所在地 鎌倉市津西2−11と13の間
34段/高低差約7m

 踏み面の奥行きは30cmと平均的だが、蹴上げが23cmと大きいため、傾斜は37°にもなる。古い寺社でときどき見られる急な石段と同程度で、新しい住宅地では珍しい。通る人は皆、足下を見ながらゆっくり上り下りしていく。

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 高低差が約7mあるため見晴らしもよい。南向きに下る階段なので、遠方は海、江の島、相模湾方面だ。大船から次第に南下してきたが、ここでようやく海の近くにやってきたことが実感される。

14.腰越5丁目のS字型抜け道階段

 神戸川の低地から片瀬山方面へ上るこの階段は、100mほどの長さがあるS字型の細道を上る。下段、中段、上段とそれぞれに段の様子が異なり、階段周辺の人々が費用を工面しあって造ったのだろうということが想像されて、歩いていて飽きない。

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腰越5丁目のS字型抜け道階段
所在地 鎌倉市腰越5−15と19の間
87段/高低差約24m

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 途中で下を振り返ると、ここからも腰越の海と海沿いの街が遠くに見えた。整備が行き届いていない階段もまた個性的で印象的な風景をみせている。

 さて、ようやく主な階段を見て回ることができたので、目白山下駅から再びモノレールに乗り、終点の湘南江の島駅へ向かう。

15.龍口寺境内の階段

 龍口寺は、終点の湘南江の島駅から東へ200mほどの場所に、片瀬山を背にして山の懐に鎮座している。日蓮上人ゆかりの古刹だそうだが、それはまた別記事に譲ることとして、今回は最後にこの境内の階段を上ることにする。

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龍口寺 本堂と参道の石段(14段)
所在地 藤沢市片瀬3−13

 江ノ電が走る門前の道から境内に入り、仁王門をくぐって石段を22段上り、山門を経て更に石段を14段上ると本堂前に至る。欅造りの本堂は1832(天保3)年竣工で規模が大きく立派だ。

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五重塔への階段
36段/高低差約10m

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七面堂への階段
80段/高低差約17m

 本堂の右奥には1910(明治43)年に建てられた五重塔が聳え、左奥には丘の中腹にある七面堂へ向かってまっすぐな石段が延びている。

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 七面堂そばの階段を更に上ると仏舎利塔前の広場にたどり着く。片瀬山西南端のこの広場からは、木々の間に江の島が見え、海辺にたどり着いたことが改めて実感される。

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 今回は大船〜江の島界隈の階段と眺望、街並みや地形を堪能することができた。湘南モノレール周辺は丘と谷がかなり入り組んでいて、階段もさまざまな方向を向いている。従って階段から見える風景もバラエティに富んでいて飽きない。東京23区内に比べて高低差が大きいので、階段巡りをするにはややハードだが、地形と階段と眺望景観をかなり楽しむことができるエリアだ。

 モノレールと階段を一枚の写真に納めるのはやはりなかなか難しいが、これもまちあるきの一つの楽しみ方だと考えて、また歩いてみたいところだ。周辺にはまだ訪れていない階段が多数ある。季節を替えて、また湘南モノレールを使って訪れたい。

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松本泰生
松本泰生(まつもと やすお)

1966年静岡市生まれ。尚美学園大学講師・早稲田大学オープンカレッジ講座講師。
早稲田大学理工学部建築学科卒業 博士(工学・早大)
専攻の都市景観・都市形成史研究を行う傍ら、1990年代から東京の街と階段、坂を訪ね歩く。
2000年代からはカルチャーセンター講座などで、地形や階段を中心としたまちあるきも行っている。
著書は『東京の階段-都市の「異空間」階段の楽しみ方』(日本文芸社)、『凹凸を楽しむ東京坂道図鑑』(洋泉社)、『新宿学』(紀伊國屋書店・共著)など。

ブログは「都市徘徊blog」https://blog.goo.ne.jp/asabata
「東京の階段DB」https://blog.goo.ne.jp/tokyostair
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