8.モノレールを間近に見上げる階段
さて、前回からの懸案は、地形と関係がある階段とモノレールの両者が、はっきり大きく写った写真を撮れる場所はあるかどうか?、ということ。前にも述べたがこれが意外に難しい。モノレールのある道路の下を横切る地下道の階段はあるのだが、これは地形とはほぼ関係がない。階段とモノレールの両者を大きく写せる場所は、ありそうでいてなかなか見つからない。
そこで、当初から目星を付けていたモノレール下の道沿いにある階段へ向かう。最寄り駅の湘南深沢駅は梶原川沿いの低地にあり、平坦なので近辺にはかつてJR鎌倉総合車両センター車両工場もあった。湘南モノレールの基地と本社もこの平坦な場所に造られている。
西鎌倉駅へ向かって湘南深沢駅を出たモノレールは、鎌倉山トンネルへと坂を上っていく。モノレール下の道路も山へと上るが、この坂は切通しと盛り土を用いて低地側に長く伸ばされて緩やかにされている。このため、山下の低地でこの道を横切る道とは立体交差になっており、交差部には両者を結ぶ階段が造られている。
モノレールを間近に見上げる階段
所在地 鎌倉市笛田2-1
36段/高低差約6m
現地を訪れてみると、立体交差部はトンネルになっており、そのわきから階段が坂道の方へ伸び、上空にはモノレールの軌道が通っていた。しばらく待っていると、例によって鋼鉄製の軌道の継ぎ目でガタンガタンと音をさせながらモノレールがやって来た。
やや人工的な地形上に造られた階段なので、理想を完璧には満たせなかったが、階段とモノレールの両者をはっきり写し込むという懸案事項をようやくクリアする。モノレール写真としてはイマイチなんだろうが、階段写真としては個人的に満足したのでした。
9.薮の中の蛇行した道にある落ち葉に埋もれた階段
再び低地側に下り、笛田川沿いに少し南下してから西へ入り、かつての「京浜急行自動車専用道路」へ向かって西向きに上る。
落ち葉に埋もれた階段
所在地 鎌倉市笛田2-3と5の間
高低差約14m
住宅地図には蛇行した階段道が掲載されているのだが、訪れてみたら草が茫々の薮の中を行く道だった。一応、段々はあるが斜面に石を並べただけのもの。また、下部は辛うじて段々が見えるが、その先は薮で、更にその先では落ち葉が厚く積もっていて段が見えないので、段数も分からなかった。
日常的にこの道を利用している人はほとんどいないのだろう。通り抜けてよいものかどうか躊躇してしまうほどの道だったが、市街化が進んだ街のすぐそばにこんな山道のような階段道があることに驚かされた。と同時に、こんな道まで調べ上げて住宅地図に掲載しているゼンリンという会社の姿勢にも驚かされるのだった。
10.「ローストビーフの店鎌倉山」そばの階段
鎌倉山を上り、尾根筋の鎌倉山ロータリーから東へ入る。この界隈は昭和初期に開発された郊外住宅地だそうだが、その奥の住宅地は、高度経済成長期以降の、造成をして区画割りをがっちり行った戸建て住宅地とは異なり、起伏のある丘陵地に地形に沿って道を通しただけの別荘地のような佇まいになっている。電気、ガス、水道はあるはずだが、あたりには樹林地も多く、細道を歩いていると長野県内などの別荘地に迷い込んだような気分になる。
鎌倉山3丁目の階段
所在地 鎌倉市鎌倉山3-14と15の間
9段/坂全体の高低差約20m
坂を上っていくと、坂道に石を置いて段々を設けた階段道になる。ここでもところどころから眺望が得られる。道は緩やかに奥へ続くが、この先に家はあるのだろうか?、通り抜けられるのだろうかと不安になるような道だ。学校帰りの小学生が私を追い越して走っていくのだから家はあるのだろうが、角を曲がったら少年は消え失せてるなんてことになるんじゃないかと思わせる場所だった。
少年を追うように歩みを進めると、竹林に入ってしまった。夜間は真っ暗で危なそうだ。でも昼間は気持ちがよい。鎌倉にはこんな住宅地もあるのかといたく感心してしまう。竹林を抜けると「ローストビーフの店鎌倉山」のすぐ裏手に出る。有名なお店と、人がほとんど歩かない道が隣りあっているのがなんだか不思議だ。
11.横浜方面を遠望できる階段
前回までの丘に比べて鎌倉山はやや高く、高いところでは標高が80m以上あったりする。このため丘の上からの眺望が素晴らしい。
鎌倉3丁目14の階段は東向きに下るもので、遠方の丘の奥には横浜のランドマークタワーやベイブリッジが微かに見えている。遠くの建物や山を見ると方角や距離感が掴めて面白い。横浜のビルが意外に大きく見えたのも印象的だった。
所在地 鎌倉市鎌倉山3-14-19と20、39の間
86段/高低差約16m
こんなに景色の良い住宅地があるものなのかと驚く一方で、廃屋のように見える家々が階段の途中に点在しているのを見ると、さまざまな事情があって住み続けられないケースもあるのだろうななどと思う。
12.西鎌倉方面を望む階段
尾根を越えて丘の西側へ向かうと、こんどは西向きに下る階段の上に至る。この階段からも天気がよければ富士山を遠くに望むことができる。午後の日射しは眩しく、明るいパノラマ景が眼前に広がる。遠くには西鎌倉の戸建て住宅団地が見え、その屋根が春霞の中でキラキラ輝いていた。
所在地 鎌倉市鎌倉山3-13と14、16の間
157段/高低差約26m
階段は屈曲したり分岐しながら高低差約26mを下っていく。モノレールは片瀬山をトンネルで通っているので残念ながら見えないが、眺望を楽しみ、周辺の地形の起伏を味わうには絶好の場所だ。