江の島への近道 湘南モノレール株式会社

映画的視点で見おろし見わたし見つめる旅(2)

湘南はシネマパラダイス

鎌倉市川喜多映画記念館の学芸員・阿部久瑠美(あべくるみ)さんは、鎌倉に通い始めて4年。ところが大船は通り過ぎるだけで、湘南モノレールに乗ったことがないというのでお連れしましたよ。映画専門家の視点で楽しんでもらいましょう。そして、かつて松竹撮影所があった大船をはじめ、いろいろな映画のロケ地でもある江の島などゆかりの場所も巡りましょう。

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「サラリーマン風の人たちがたくさん降りていっちゃいましたね」
大船から2つ目の湘南町屋駅は三菱電機の最寄り駅でもあります。
「都心の電車とはまた違う通勤風景で新鮮でした」

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「このあたりはけっこう山を切り開いて通したような感じですね」
車両の両側が緑になってきました。

「鎌倉には切り通しもたくさんありますよね。ある映画では釈迦堂切り通し(現在は通行止め)を学生が自転車で走るシーンが出てきます。ただ、そこを抜けたら実際とは全く異なる場所に学校がある設定だったり(笑)。映画ならではの『あるある』ですが」

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「あっ、トンネルもあるんですね」

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「街や緑や空が両側の窓に広がっていたところから一転、真っ暗になるところが映画的」
そういえば、轟音で声も聞き取りにくいほど。たしかに、映画やドラマでこういうシーンは効果的に使われていることを思い出しました。

「暗闇の向こうに小さく出口が見えるのもいいですね。場面転換、まるで『雪国』のようなワンシーン」
「このトンネル、映画に使われたことがないのかな。ん~、迫力満点だし、使ってほしい!」

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「線路を敷くのも大変なのでしょうけれど、こうして柱を立てていくのもとてもご苦労だったでしょうね。いったい何本あるんだろう」
あまり気にしたことはなかったのですが、そう言われてあらためて支柱に注目して眺めてみると壮観。ものすごい柱の数です。

「柱が景観を損ねるという見方もあるかもしれませんが、これはもうこの街の風景。映画で考えると印象的な目印になるんです。きっと珍しい構図として見た人の記憶に残るはず」

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「あっ、海。向こうに光が当たってきれい」

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「山の中を走っていると思っていたら、いきなり海が見えて新鮮。この展開も映画で使えますよね」

そして、最後の短いトンネルを出ると湘南江の島駅に到着です。
新装なった駅舎の最上階から街を見てみましょう(この日はまだ完成直前でルーフテラスには出られませんでした)。

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「海から山並みの輪郭が見事。あのあたりが箱根から伊豆ですか。あっ、うっすら富士山も見えますよ」

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「あら、でもあのマンションがじゃま!」
ほんとうだ。黒澤監督なら「あのマンションをどけろ」と言ったかもしれません(笑)。

「さっき上空を走っているときも感じましたが、こうして高いところからだと大きな建物がたくさんあることにあらためて気づきます。地上を歩いていると視線が低いからそれぞれの大きさは案外分からないものです」
なるほど。視点が変わるからこそ気づくことってあるんですね。

さて、改札を出て江の島方面に歩いてみましょう。

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「川喜多映画記念館では、こんな冊子を発行しているんです」
と久瑠美さんがバッグから取り出したのは「鎌倉映画地図」(800円)。鎌倉や湘南の映画のロケ地ガイドです。

「ちょっと見てみますね」

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「この橋から『 I can fly!!』と叫びながらペコ役の窪塚洋介さんが飛び込んでますね」
そう、まさにここ、小田急片瀬江ノ島駅前の弁天橋は「ピンポン」(2002年/曽利文彦監督)という映画の重要なシーンのロケ地でした。

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江の島もたくさんの映画(実写アニメ問わず)の舞台となって登場しています。「江の島プリズム」「タイヨウのうた」「僕の初恋をキミに捧ぐ」「南太平洋の若大将」・・・
『海街diary』に出てくる海猫食堂のシーンは江の島の「文佐食堂」で撮影。聖地巡礼をしているファンもいます。
「私の大好きな『男はつらいよ』の「寅次郎あじさいの恋」(1982)には江之島亭が出てきますよ」
映画の専門家の久瑠美さん、寅さんが好きなんですね。

さて、そろそろ駅に戻って大船に向かいましょう。そして、復路も久瑠美さんならではの視点で眺めてもらいましょう。

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鈴木章夫
鎌倉好きや鎌倉に関する本が集まる仕組みの小さな会員制図書館「かまくら駅前蔵書室(別名カマゾウ)」(https://www.kamakuraekimae.com)の 室長で、街のハッピーニュースを発信する「鎌倉経済新聞」(https://kamakura.keizai.biz)編集長。バーチャルなフェイスブックも楽しいが、アナログなフェイスtoフェイスを大切にしている。
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