2018年12月、湘南江の島駅がリニューアル、地上5階のテラスが開放された。真下には江ノ電が走り、高層マンションの向こうには海が見える。それだけでなく、遠くには富士山もばっちり見えるのである。すばらしい眺めだ。この駅を最初に訪れたときは、びっくりした。大船からモノレールに乗ってやってくると、ひとつ手前の目白山下駅からトンネルに入る。トンネルといえば地中、地面よりも下である。わざわざ言うまでもない。【目白山下駅からトンネルに入るところ】
ところが、そのトンネルを抜けた瞬間、空を飛んでいたから混乱した。
【トンネルを出た瞬間の眺め】
トンネルを出たらふつうは地上近くを走っていると思うわけですよ。それがトンネルを出た途端、地上はるか高いところを走っていた。懸垂式モノレールだから常に空を飛んでいるとも言えるけれど、そういう詭弁のような話ではなく、ここではトンネルを出た途端なんと地上5階相当の高さに躍り出るのである。
つまり、こういうことだ。
湘南モノレールの路線の高低差を示す次の図を見て欲しい。
お気づきだろうか。
赤く囲んだ部分。ものすごい断崖絶壁の途中からモノレールが飛び出しているのだ。トンネルを抜けたらそこは崖の途中だったなんて、そんな場面、映画でしか見たことないぞ。そうしてモノレールはそのまま地上5階の湘南江の島駅ビル最上階ホームへとすべりこんでいく。
駅が崖の横に建っているのである。
なんというスペクタクルな構造だろうか。
そもそも、こんなに高い駅は珍しい気がする。
と。ここでふと思ったのである。
ひょっとして湘南江の島駅、地上からの高さが日本一ではないのだろうか。
調べてみると湘南江の島駅の地上からの高さは15.3m(駅自体ゆるやかな斜面に建っているため、これは一番海側の地面から計った数字)。
これまで地上からの高さが日本一高い駅は、JR三江線の宇津井駅とされていた。宇津井駅の地上高は20m。「天空の駅」の異名を持ち、エレベータがないために、ホームまで116段の階段をあがらないと列車に乗れなかったという。
だが、三江線は平成30年4月1日に廃線になり、宇津井駅もなくなった。
となると、現時点での日本一はどこか。
もしかして湘南江の島駅ではないか。
試しに階段を数えてみると、98段だった。
おお、これは、ひょっとして、
「天空の駅」の名をいただいてもいいのでは?
ちなみに全国で他に該当しそうな駅はどこがあるだろう。調べてみたが、どこにもきちんとした情報がない。
仕方がないのでネットの情報からあれこれ推測してみると、可能性がありそうなのは、
小田井駅(東海交通事業)
新越谷駅(東武伊勢崎線)
河堀口駅(近鉄)
筑前山手駅(篠栗線)
東松戸駅(北総鉄道・京成線)
などであった。どれもほぼ同じぐらいの高さのようなので、近場の駅だけでも調べてみることにした。
まず向かったのが東松戸駅である。
【北総鉄道・京成線 東松戸駅】
東松戸でホームまでの階段を数えると、なんと同じ98段だった。1段の高さを測ると16センチ余だったので、掛け合わせて見るとホームの高さはだいたい15.8メートル。ざっくりした計算なので湘南江の島駅とどちらが高いか微妙だ。
次いで、新越谷駅にも行って測ってみると、階段は104段で1段の高さは15センチだった。計算するとホームの高さは15.6メートル。
んんん、またしても微妙。
【東武伊勢崎線 新越谷駅】
名古屋や大阪、福岡にある小田井駅、河堀口駅、筑前山手駅は調べていないが写真を見る限り同じようなものだろう。
結局、どこが一番高いかわからない。
しかし!
調べたのはホームの高さ。ホームの高さがほぼ同じなら、レールの高さでは湘南江の島駅が一番ではないだろうか。なにしろ懸垂式である。
レールはホームより上にある。他はみなホームより低い位置にレールがあるわけだから、湘南江の島駅の勝ちだ。
というわけで湘南江の島駅、三江線の後を継いで「天空の駅」を名乗ろうかと思ったんだけれども、気になることがあった。
同じ懸垂式の千葉都市モノレールはどうなのか。
レールがホームより高いのは同じだし、そもそも私のおぼろげな記憶では千葉都市モノレールも相当高い位置を走っていた。
さっそく乗りに行ってきた。
全線を踏破し、目分量で一番高い駅は基点の千葉駅であろうと踏んだ。
【千葉都市モノレール千葉駅への軌道 隣のビルと比較するとわかるが、とても高い】
そして階段の数を測ってみると、なんと122段!1段の高さをかけると20メートル近くある。
だめだ。どう考えても千葉駅のほうが高い。
プラットホームの高さでもここが日本一かもしれない。階段の段数を考えると、実はかの宇津井駅よりも高かったのでは?
ともあれ、湘南江の島駅日本一の夢は破れたかに思えた。
しかし!
湘南江の島駅には他にも珍しい特徴がある。
それは改札だ。
通常、高層駅では改札はホームのひとつ下の階にあるが、湘南江の島駅はホームと改札が同じ階にあるのである。
つまり改札の高さでは日本一の可能性大。
【プラットホームと改札が同じ5階にある】
そしてそのまま改札を抜けた途端にひろいテラスがあって、天気がよければ富士山が見えるわけなのだ。
これはもう駅=展望台ということ。
まさに空の駅なのである。
地上から改札までの高さ日本一は、湘南江の島駅だった。
そしてその改札と地上とは、98段の階段だけでなく、エレベータとエスカレータでも繋がっている。さらにモノレールを利用しない人でも誰でも、展望台までバリアフリーで上り下りできるのも魅力だ。
ということで、ここに湘南江の島駅の栄誉をたたえ表彰いたします。
いいや、ちょっと待った、うちの駅の改札はもっと高いところにある。と思う駅はぜひ名乗り出てください。どこも名乗り出なければ、湘南江の島駅改札が地上高日本一ということで「空の駅」に認定します。(念を押しておきますが、地上高であり、標高ではありません)
以上、「空の駅」湘南江の島からお届けしました。
富士山の眺めまで、モノレールを降りて15秒です。