"トンネルを抜けるとそこは・・・" の定番表現は、川端康成の「雪国」冒頭文からの引用です。この文章は鉄ちゃん心理を実にくすぐる豊かな表現です。暗く長い重たい雰囲気のトンネルから、一気に広大な風景が窓いっぱいに広がる・・・。想像しただけでも溢れる旅情。まさに汽車旅ならではの表現でしょうか。
さてさて、雪国から南国に話が戻りまして、目白山下から続くトンネルを抜けるとそこは・・・試練の場所。"窓の外、頭の底が真っ白となった" とまで言ったら大袈裟でしょうか。前回からご紹介している湘南江の島編、結論として撮影できそうな距離はわずか50メートル。鉄道の難所ならぬ、"鉄道写真の難所"です。いやはや、先ほど撮影した「湘南江の島」の駅名板も心なしか立ちはだかる壁のように見えてきました(?)
だがしかし!ここで火がつくのがカメラマンなのです。鉄道写真は「被写体への愛」と「写真の技術」。モノレールが魅力的に撮れるように工夫しましょう!
そして、沿線へとやってきました。鉄道写真で最も大切なこと一つがロケハン(下見)です。場所を探す方法はいくつかありますが、最も良いのが実際に列車に乗って探すことです。ネットや書籍で情報を得ることもできますが、現地へ行くと撮影困難なこともしばしば。その可能性も含めて、できるだけその日のうちに確認することがベストです。
この時も列車からのロケハンで撮影場所を見つけました。駅に近い場所です。民家に囲まれているポイントです。クリアに見える場所はわずか1.5 両分といったところでしょう。
撮影場所は限られています。ワザならぬ、撮法!が大事です。鉄道写真では車両を止めて写すことが基本なので、高速シャッターが常用となるのですが、列車の躍動感を表現したいと思います。撮影設定をスローシャッターで撮影してみましょう。
撮影方法は単純で、画面上で止めたい部分に速度を合わせてカメラを振って撮影します。この写真の場合は先頭車のライト部分をターゲットとしました。速度が遅い時には繊細に、早い時には俊敏に合わせてゆきます。ズームも一緒に使うと良い時もあります。すると・・・列車の姿は止まり、その他の風景が流れてゆきます。これが流し撮りという撮法です。シャッタースピードは1/15秒です。
今度は同じ場所からですが、レンズの特性を活かして"優しい木々に囲まれて走る列車"を表現してみましょう。
ここで重要なことはカメラの設定で、絞りを開いて撮ることです。するとどうでしょうか、ピントの合っている部分とそれ以外の場所が違う空間のように表現されました。この時に大切なのは、望遠レンズを使うこと・手前と奥の距離感を意識すること・逆光や半逆光だとなおよし!この三つが要となっています。
湘南モノレールは、一時間に両端の駅から8本ほど運行されています。撮ろうと思えばいくらでも撮れてしまう、とても良い条件の路線です。その反面、列車が来ると反射的に構えてしまい、本人も気づかぬうちに疲れてしまうこともよくあります。その結果、どのような写真を撮りたいかを見失ってしまうことも・・・。撮影は余裕を持って挑むことが良い写真が撮れる秘訣でもあります。美味しいグルメも豊富です。そちらも楽しみの一つに頑張りましょう。さあ、いろいろと撮影しているうちにあっという間に時間は過ぎてゆきます。
様々な撮法と被写体の組み合わせで表現の幅は本当に無限に広がります。これだから写真はやめられません!
そろそろ場所を変えて撮影しましょうか。ぐるっと回って駅の下をくぐる道路まで行ってみましょう。
さて次はどんな写真が撮れるのか。次回もきっと青信号です! まだまだ「ジェットでGO!GO!!」は続きます