ぶら下がっているからこその工夫
車体を下から、しかも間近で見てはじめて気づくことも多い。
振れ止め車輪とドレーン(萩原撮影)
車体のスミに取り付けられた車輪。これは振れ止め車輪といい、停車中、ホームと車体が接触して、車体が破損するのを防ぐためのものだ。
そして、さらに気づきにくいかもしれないが、さらにドアの両側下にストローの先っぽみたいなものがふたつついている。これはなんなのか?
湘南「これは、冷房の排水用のドレーンですね、モノレールはぶら下がってるから、走行中に空調の排水をボタボタ落とすわけにはいかない。ですから、駅に停まって、ドアが開いたときだけ排水するようにドアと連動してるんです、だからドアの横についている」
地面の上を走っている電車は、常に垂れ流しかもしれないが、モノレールは下に人がいるので、水を落とすわけにはいかないのだ。
間近で観察できるからこそ気づくモノレールの構造だ。
パンタグラフがミニチュア
湘南モノレールの車両基地は、車体の駆動部分を点検するため、3階部分は、レールの上がむき出しになったフロアがある。
駆動部分が丸見えの階
ここはほんとうにすごい。だって、湘南モノレールの駆動部分は、ふだんは箱型のレールの中にすっぽり入ってしまっており、外側から見ることなんてできないのだから。
うっかり、撮影する写真も多くなってしまう。
パンタグラフ(萩原撮影)
横についているパンタグラフ(萩原撮影)
萩原「パンタグラフが、そのままの形でミニチュアみたいになってておもしろいですね」
湘南「タイヤの真ん中にあるパンタグラフで電気を取り込んで、脇のパンタグラフで電気を逃すんです」
萩原「あそうか、タイヤがゴムタイヤだから......」
――え、どういうことですか?
萩原「普通の電車は、パンタグラフからプラスの電気を取り込んで動力に使うんですが、マイナスの電気を車輪からレールに逃がしているんです」
――えぇ、そうなんだ......。パンタグラフから電気をとりこんでそこで終わりかと思ってました......。
湘南「モノレールは、ゴムタイヤですから、レールにマイナスの電気を流せない。そこで、プラス用のパンタグラフと、マイナス用のパンタグラフのふたつがあるんです」
パンタグラフの架線と接触する部分「すり板舟」の使用前と使用後
普通の電車は、車輪から、マイナスの電気をレールに流している......恥ずかしながら、私は知らなかった......。
ちなみに、普通の電車の車輪から流れたマイナスの電気は、吸い上げ線という電線で、架線の上にある饋電線(きでんせん)という電線まで送られている。この電気は、マイナスなので、電圧も低く、レールに触ったとしても人間が感電するほどのことはない。
萩原「ちなみにこれ、ブレーキはなんですか?」
湘南「ディスクブレーキですね」
萩原「なるほど、モノレールは、車と電車をかけ合わせたようなものですね」
パンタグラフなどの、電気で動く部分だけみると、電車のようであるけれど、タイヤやブレーキの仕組みをみると、自動車のようでもある。
モノレール用に特別あつらえのゴムタイヤ
たしかに、湘南モノレールは、乗っていてもブレーキのかかり方や加速の雰囲気などは、バスの乗り心地にそっくりだな。と思っていた。
モノレール、ただ吊り下がっているだけじゃない、電車とバス(自動車)のしくみをもったハイブリッドな存在であることがよくわかる。
次回は「甘い消毒液に灯油の出る蛇口、基地の設備に注目する大人たち」です。