大船から湘南モノレール、湘南深沢駅から徒歩2~3分のボウリング場の2F。ガラス張りの入口には「モノレール DE 武士体験鎌倉もののふ」の文字。室内には幟(のぼり)がズラリ......。
トビラを開けるとそこに、立派なヒゲを蓄えた武者姿の男性が待っていてくれた。
「鎌倉もののふ隊の深沢砦にようこそ。隊将の鎌倉智士と申します」
鎌倉もののふ隊って......、確かに鎌倉は武士と大変関わりの深い土地だけど。源平合戦の時代ならともかく、20世紀ですよ、今。
「もののふ隊は、2011年11月に旗揚げ(発足)しました。歴史装束での撮影会やワークショップ、ガイドつきの史跡めぐりなんかを通じて、地元の歴史を知ってもらおう、という組織です」
鎧フル装備の深沢砦にて、愛馬とともに
もののふ隊、聞けば聞くほど、その活動内容が半端ない。
撮影会の歴史装束でいうと、武士だけで大将、副将、僧兵、侍大将、近習、下卒......それぞれに衣装が別々で選べてしまう。女性ものもあるが、姫はともかく、白拍子(男装の遊女のこと)を着たい、という需要はどのくらいあるのだろうか。
「個別に集計していないのですが、どの衣装もそれなりに『着たい』という希望者はいますよ。全く人気ゼロというのはありません。全衣装トータルでは、2017年までの丸6年で約3200人。2018年は6月末までの半年間で、500人ぐらいにはなります」
リピーターが多く、その割合は80%近くにもなるとか。歴史装束、一度着るとやみつきになるらしい。
「『初めはやっぱり恥ずかしかった』という人が多いのですが、最終的には、みなさん満足度が高い。『一生分の写真が撮れた』という声もありましたね」
ワークショップで制作するのは──弓矢はまだいいとして、兜や鎧まで。素材は樹脂が中心だが、一枚一枚のパーツを切り出し、数千枚を紐で繋いで組み合わせる作りは昔のまんま。そのあたり、鎌倉さんの歴史に関する博学が存分に活かされている。もののふに妥協はないのだ。
「もしよかったら、鎧作りに来てくださいよ。平安鎌倉期のタイプしかないですけどね(笑)」
戦国時代と鎌倉時代とでは、鎧の構造も素材も違うのだとか。平安鎌倉期の鎧を、しかもオリジナルで自作できるのは、日本で(おそらく)ここだけ。
もちろん、1日で出来上がるはずもなく、何度か通って完成することになる。2018年は、前半だけでも16~17人が作りに来ていて、遠くは埼玉や東京東部からも足を運んでいる人がいるという。まあ全国探しても、鎧が作れるワークショップ自体が、そうそうないはずだ。
企業ロゴ入りなどオーダーメイドで制作することも