鎌倉市なのに横須賀市、というところがあるらしい。
北鎌倉観光ボランティアガイドの喜清みずほさんよりお話を伺い、紹介いただいた資料※1をみると、湘南深沢駅付近を交差するかたちで「横須賀水道みち」と呼ばれる道が通っている。
これは、100年ほど前に、旧海軍が横須賀に水を供給するために手がけた上水道=横須賀軍港水道(半原系統)が通る道で、その距離は、相模川支流の中津川から横須賀の逸見(へみ)浄水場まで、全長約53㎞。
2015年に廃止され、今はもう役目を終えているが、道沿いに「ここは横須賀水道みちですよ。下には横須賀軍港水道が通ってるんですよ。」と知らせてくれるものが残されている。それが上の写真のような「境界杭」だ。
横須賀軍港水道が通る土地は、鎌倉市内にあっても横須賀市が所有している。つまり、境界杭があるところは、横須賀市なのだ※2。
そして、この境界杭にはいくつかの種類があるそうだ。主なものは以下の2種類。
(1)旧海軍がたてた"元祖"境界杭
(2)戦後、水道が移管されてから横須賀市がたてた境界杭
レアなのはやはり(1)だろう。近年では、市街地整備などにより、境界杭が新しくなっていたり、埋もれてなくなっていたりするところも多いようだ。が、湘南深沢駅付近には、旧海軍がたてた昔ながらの境界杭も数多く残されているという。
なんだか面白そうなので、この境界杭を探しに行ってみよう。
*
湘南深沢駅から江の島方面に向かって桁(けた)沿いを歩き、洋食屋さん「OBA'S キッチン」の前を行くと、交差する道路がある。これが横須賀水道みちだ。
横須賀水道みち。前が中津川方面、後ろが横須賀方面。
トンネルを抜けると、早速、進行方向左手にある個人宅の前に、こんなものを発見。
「水」の文字。
あぁ、これだこれだ。水道の「水」の文字が刻まれている。
そして、この石を上から見ると...
YOKOSUKAの「Y」。
埋まってる感が半端ないけど、まずは第一号発見。
さて、この調子で、どんどん行こう。「水」以外のものもあるはずだ。
歩き出すと、右にも左にも、同じような境界杭があった。少し崩れかけているものもある。道路をジグザグに横断し、ひとつひとつチェックしながら先へと進んだ。
スーパーたまやさんの駐車場裏口に発見したこれは、「水」だけでなく「道」の文字まで見える。
「水道」の文字。
さらに進むと、「海」という文字が刻まれたものがあった。これぞ"元祖"境界杭!その上にあるギザギザ模様は、湘南モノレールのロゴの「M」の字によく似ている。でも「海」の上にあるから、きっと波を表しているのだろう。
注)資料※1によると、この模様は「山形二条マーク」と呼ばれ、「海」の文字と同様に、旧海軍を示すそうです。
少し先に、ピタゴラ装置(※3)みたいなものがみえた。
ピタッゴラッスイッチ♪
湘南モノレールの車窓からもよく見えるやつだ。こんな巨大なピタゴラ装置が本当にあったら面白いだろうな、と思いながら近づくと...
あっ!
これ、路上園芸学会の村田あやこさんのコラムに出てきそうなやつ!村田さんのコラムを読んでから、すっかり路上園芸の虜だったりする。
そんな場所にも、新バージョンの杭を発見。
「水道部」。
今まで、刻まれている文字は「水道」の二文字で完成形だろうと漠然と思っていたけど、三文字あったのか。
あと、緑を背景にしたそのロケーションがなんだか素敵にみえたので、こちらも紹介したい。
緑の背景に彩られた境界杭
やはり湘南モノレールのロゴにみえるが(これも"元祖"境界杭)
後半へ続く
※1
「横須賀軍港水道 半原系統水道みち」横須賀軍港水道半原系統水道みち踏査・活用プロジェクトチーム(2015.02)
※2
2015年の半原系統廃止後は、土地の売却がすすんでいるが、今回紹介した区間は、未だ横須賀市所有の土地(2018年6月現在)
※3
ピタゴラ装置とは、Eテレ(NHK教育テレビ)で放送されている「ピタゴラスイッチ」という番組に登場するからくり装置