大エノキと別れて奥へと進んでいくと、視界が徐々に樹々に覆われ森に突入していく。
森の中へ突入
尾根の散策路では、足元で根っこがすごいことになっていた。
向こうの方まで続く根っこの道
根っこが地面に浮き出て、こんがらがった状態で向こうまで続いている。根っこフェチとしては興奮を禁じ得ない光景だ。
小山さんいわく、根っこが文字に見える珍樹もあるとのこと。これだけ絡まっていると「薔薇」みたいなややこしい漢字が潜んでいるのではと期待が高まるが、薔薇どころか片仮名の「バラ」さえも見つからない。
「木」と「人」が絡まりまくったような模様。この場所を体現しているかのようだ。
訪れた日は桜の開花シーズン。森の中では桜の巨木が花を咲かせており、花見に訪れた人たちと何組かすれ違った。
しかしわれわれの目的は珍樹。桜にはほとんど目もくれず、ひたすらハンターのごとく目をギラつかせて森をうろつく。
「大物を見つけたい!」とずんずん先へ進んでいく冒険家のような宮田さん。
「意識しないでいると、思いがけずいい珍樹に遭遇できることがある」とマイペースに歩き、もはや達人の域に達している小山さん。
他方、樹の根っこに文字が潜んでないかと、下ばかり見てのろのろ進む私。
三者三様での珍樹探しが続く。
洞窟の中で何かを拾う猿(撮影 宮田珠己)
眠そうなおばあちゃん
驚く人
ところどころで樹々の向こう側に、学校や民家が見える。向こう側とこっち側とでなんだか別世界が広がっているような不思議な感じだ。
そう感慨にふけっていると、樹々の間から急に黒くて高い塔がにょっきりと現れた。
樹の間から突然見える棒
付近の看板を見ると「浄化センター入口」とある。どうやら下水処理場らしい。しかし「浄化センター」という名前といい、フォルムといい、なんだか山奥の宗教施設めいて見える。勝手ながらこの場所を、鎌倉広町緑地のパワースポットに認定したい。
パワースポットへの入口
七里ガ浜寄りのエリアは特に住宅街に近接し、森を抜けた広場が民家の裏側だった。
トンネルみたいな道にわくわくする。(撮影 宮田珠己)
トンネルを抜けるとそこは住宅街であった。
珍樹の世界から、急に現実世界に引き戻された気持ちになるが、このギャップもなんだか楽しい。広場は見晴らしが良く、向こうの方に海も見えて気持ちが良い。
緑地内には数カ所、眺望スポットがある。
怒り狂っているタコ星人
散策路をさらに進んでゆくと、「小竹ヶ谷」という湿地に出る。ここは昔、田んぼがあった谷戸らしい。不思議な形のシダ植物があちこちから顔を出しており、なんだか原始の森を彷彿とさせるような、幻想的な空間だ。
宇宙人みたいなシダがかわいい。
湿地を抜けるとやがて視界が開け、元の入口付近まで戻ってきた。
小山さんが「ひふみんを見つけた」と、おもむろにカメラを取り出した。
将棋棋士・加藤一二三さん似の珍樹
いま大ブレイク中の「ひふみん」こと将棋棋士の加藤一二三さん似の珍樹。ふっくらした表情といい、可愛らしい口元といい、まさにひふみん!
すごい、小山さん。いつのまにこんな珍樹を。
樹の形を何かに見立てるというのは、自分がいま知っている言葉や形の引き出しとも関わる。
最初に見た時点ではうまい見立てが見つからなくても、あとから「あの時の樹の形ってコレじゃん!」と再発見する場合もあるだろう。たとえば、ひふみん似の珍樹も、ひふみんを知らない頃に見たらピンとこなかったかもしれない。
そう思うと、珍樹ハントは、同じ場所でも訪れるたびに常に新しい発見がある楽しい遊びだ。
私も韓国語とかアラビア語とか象形文字とか、いろんな形の文字を身につけたら、根っこの見え方も変わってくるかもしれない。気が遠くなるくらい大変そうだけど。
他の国の方に、どんな文字が見えるか聞いてみたい。
小山さん曰く、お気に入りの珍樹があると、その場所に友だちがいるような気持ちになるそう。無事かどうか、後日「生存確認」しにくることもあるとか。
そんなこんなで、当初はあまりの広大さに不安だった鎌倉広町緑地だったが、珍樹ハントを通して、ずいぶんと親しみが湧いたように思えたのだった。
タコ星人、またこんど!
小山直彦さん、宮田珠己さん、ありがとうございました。
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鎌倉広町緑地
所在地:鎌倉市津1133番地(鎌倉広町緑地管理事務所)
アクセス:湘南モノレール西鎌倉駅から徒歩約10分
開園時間:常時開放(管理事務所の運営時間:8:30~17:15)
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