江の島への近道 湘南モノレール株式会社

東京スリバチ学会主催『湘南モノレールには乗らないでツアー』スタート!

以前、当サイト「ソラdeブラーン」に投稿させていただいた『地形マニアと鉄ちゃんの凹凸乗車体験記~湘南モノレールに乗って』は、一部の方々に大きな反響があったようだ。かなりマニアックな内容だけど、まだ読んでいない方は、ぜひ下記をチェックしていただけたら幸いです。
http://www.shonan-monorail.co.jp/sora_de_bra-n/minagawa/


それなりの反響のあったことに勇気づけられ、東京スリバチ学会主催の湘南モノレールを絡めたまち歩きイベントを企画してみた。「大船駅から湘南江の島駅まで、湘南モノレールには乗らないで、路線周辺の凸凹地形を味わいながら、観光スポットや気になった場所を歩いてめぐろう!」みたいなノリの、地形町歩きイベントだ。定員40名で自分の知人を中心に募集をかけたところ、あっという間に定員に達してしまった。東京スリバチ学会主催の町歩きというだけでなく、湘南モノレールや生シラス丼への関心の高さをうかがわせる。


画像0.jpg大船から湘南江の島にかけての凹凸地形:カシミール3Dを使って作成


東京スリバチ学会が開催する町歩きイベントは、原則参加費無料・現地集合・現地解散・雨天決行だ。自分も下見することなく、ぶっつけ本番の(いい加減な)スタイルで続けている。その方が自分も楽しめるし、何が起こるか分からないライブ感もいいよね(←無責任!)。
まち歩きの集合場所は湘南モノレールの大船駅改札前とした。そう、前回の記事で書いた群馬在住で幼馴染の鉄ちゃんと待ち合わせをした場所だ。その鉄ちゃんにも誘いのメールを送っておいたが、結局返事は来なかった。「湘南モノレールには乗らずに、江の島まで歩くイベントだよ」と伝えたので、興味が湧かなかったのかもしれない。だいたいグンマーは歩くことが嫌いなのだ。
妻も誘ってみたが「歩くだけなら行かない。勝手に行ってきて(不機嫌)」だった。朝、犬のトイレシートを交換するのを忘れたのが影響したのかもしれない。


集合時間になると、大船駅の改札前に続々と参加者が集まった。スリバチ学会の中でも、今回は鉄道趣味のメンバー(「東京すりてつ学会という分科会)が多い。東京近郊や遠く宮城県や名古屋から遥々やってきたもの好きもいた。そして何と、『ソラdeブラーン』でもお馴染み・宮田珠己さんもウワサを嗅ぎつけ来てくれた。実は初対面だったのだが、さっそく意気投合。いつの間にか宮田さんはスリバチ学会の変人たちとも打ち解けている。
http://www.shonan-monorail.co.jp/sora_de_bra-n/miyata2/
http://www.shonan-monorail.co.jp/sora_de_bra-n/mrbura-n-manga/


湘南モノレールを初めて見る人も多いようで、ホームに入線している車両にみんな興味津々だ。改札から身を乗り出して写真に収めている。端から見ていると、いい大人が大勢で車両の写真を撮りまくる光景は、やはり異様である。改札からはちょっと距離を置き、イベントをスタートさせることにした。
簡単なガイダンスを済ませ、早速歩き始める。東京スリバチ学会主催『湘南モノレールには乗らないでツアー』のスタートだ。東京スリバチ学会の町歩きイベントでは、自分からの解説は最小限にしている。「各自が自分で気づき、素直に驚いて周りの人を巻き込んで喜ぶ」をコンセプトに掲げているからだ。とかいうと何か格好いいが、まあいろいろと用意したり、説明するのが面倒くさいだけだ。
駅前のデッキを歩き始めたら、早速何人かがデッキの片隅で立ち止まっている。大船駅の建屋から飛び立つようなモノレールの写真を撮るためになのだろう。写真を撮ろうと待ち構えるとモノレールはなかなか現れないものだ。みんなその場から離れようとしない。デッキ上を占領するのも迷惑なので、構わず歩き続けることにした。


画像1.JPG東京スリバチ学会主催の『湘南モノレールには乗らないでツアー』がスタート!


東京スリバチ学会の町歩きは基本「自己責任」で行っているため、迷子になっても自分ではフォローしていない(参加者同士がフォローし合っているらしいけどね)。だから解散の頃には人数が減っている、なんてこともしばしばだ。来るもの拒まず、去る者追わずだ(←少々意味が違うかな)。
けれども今回は迷子になっても本体に合流することが比較的容易だと思う。なぜなら湘南モノレールの直下に道路が走っているからだ。
モノレールの軌道直下の道はかつて「京浜急行自動車専用道路」と呼ばれたもので、元々は大船と江の島海岸を結ぶ鉄道を敷設するための用地だった。鉄道建設が頓挫したため、取得済だった用地を、自動車専用道路として整備したのが日本初の専用私道・京浜急行自動車専用道路だった。湘南モノレールの建設は、この京浜急行自動車専用道路の直上が利用された。用地確保で難航する他の鉄道路線に比べると、スムーズに開業に至ったのは、湘南モノレールの出資者のひとりが京浜急行だったのだからである。ちなみに軌道直下の京浜急行自動車専用道路は現在、鎌倉市と藤沢市に売却・譲渡され一般市道に移行している。


画像1.5.jpg1960年頃の大船駅周辺。「京浜急行専用線」や「大船国鉄工場」の文字を見ることができる


それにしても、モノレール軌道に沿って歩けるのは、予想以上に贅沢な体験だった。いつもの町歩きに加え、定期的に今回の主役であるモノレールが現れるのだから。頭上をモノレールが飛ぶように走り抜け、そのたびに歓声が上がった。参加者みんなのテンションは上がりっぱなしだ。


画像2.JPG
頭上を疾走する湘南モノレール。その雄姿にみんな惚れ惚れ


懸垂型の湘南モノレールはゴムタイヤ・空気バネ(サスペンション)を用いているので、騒音も比較的小さい。みんなの会話を邪魔することなく、頭上をクールに通過してゆく。そして懸垂式のモノレール車両下部は、見られることを意識していないためか、何だかデリケートな感じがする。心をゆるしたペットが柔らかいお腹を見せている感じだ。みんな思い思いの写真をカメラやケータイに収めている。


JR横須賀線を越える場所では軌道下の道が一旦途切れるため、陸橋の歩道を歩いて横須賀線を越えた。再びモノレールの軌道に近づくと、軌道を支える逆V字型の橋脚が目に留まった。なかなか大胆なドボク構築物である。参加者にはドボクマニアも多いため、こちらでも盛り上がっている。
宮田さんが教えてくれた。


画像3.JPG富士山のような形をした橋脚の間をモノレールが軽快に疾走してゆく


「あの橋脚って、富士山の形をしているでしょ!で、偶然最寄りの駅が富士見町駅!」
「お~~」と歓声が沸き起こる。


富士見町駅の手前で、フェンスで囲まれた廃線跡と交差した。前回、モノレールの車窓から発見し、気になっていたヤツだ。モノレールに乗った時は一瞬で通り過ぎてしまったけれど、歩くことの良さは、こうしてじっくりと立ち寄れることにある。廃線跡を囲むネットフェンスにみんな張り付き、フェンスの隙間からさかんに写真を撮っている。「何かあるんですか?何があるんですか?」信号待ちで止まった車の中から声をかけられた。やはり大の大人が大勢でうごめいていると相当あやしいのだろう。
廃線跡には立ち入ることはできないが、錆びた線路とバラストの間から生えてきた植物が、廃線跡の王道とも言える光景を奏でていた。それにしてもこうした廃線跡の風景や廃墟に惹かれるのはなぜなんだろう。
「この先で、廃線跡を渡れる踏切がありますよ。そこから廃線跡と湘南モノレールを1枚の写真に収めることができます!」
参加者のひとりである東京すりてつ学会の鉄子さんが教えてくれた。こういった各分野のエキスパートがいてくれると心強い。アベンジャーズみたいだ。


画像4.JPG鉄子さんおススメの廃線跡と湘南モノレールが一緒に見えるスポットから

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皆川典久(東京スリバチ学会 会長)
2003年に東京スリバチ学会を設立し、凹凸地形に着目したフィールドワークを開催、観察と記録を
続けている。2012年に『凹凸を楽しむ東京「スリバチ」地形散歩』(洋泉社)を上梓、翌年には続編を
刊行。地形マニアとして、タモリ倶楽部やブラタモリなどのTV番組に出演。町の魅力を再発見する
手法が評価され2014年には東京スリバチ学会としてグッドデザイン賞を受賞した。2017年12月に
は『凹凸を楽しむ東京「スリバチ」地形散歩・多摩武蔵野編』(洋泉社)を共著で刊行。合言葉は「下
を向いて歩こう」。
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