湘南モノレールから歩いていける森めぐり。三ヶ所目は夫婦池公園だ。湘南深沢駅から徒歩20分程度。鎌倉山の閑静な住宅街の中に佇んでいる。
案内板
駐車場の味わい深い手書き看板
正面には、公園の名前にもなっている「夫婦池」と呼ばれる池がある。案内板によれば、江戸時代に灌漑用水として正面右手の「下池」が掘られたそう。その後左手の上池ができ、二つの池が親しみを込めて「夫婦池」と呼ばれるようになったとのことだ。
こんなに広い池を掘ったのか。気が遠くなりそうだ。
近隣の農地を潤してきた池と、その周りの森が、まるごと公園となった夫婦池公園。パンフレットによれば、貴重な野鳥、昆虫、草花が多く生息しているとのことだ。
夫婦池公園で見られる生き物たち
上池と下池の間の堤防は遊歩道で、池の向こう側に渡れるようになっている。渡りきったところで手すりから下を見下ろすと、洞窟みたいな穴から水が出て池に流れ込んでいた。
洞窟から流れ出る水
さらに奥へ進むと、右手は谷戸の谷あいにベンチやテーブルが設置された広場になっており、その左手には樹々に囲まれた散策路が広がっている。
全体的に湿気の多い森
苔むした地面がじめっと水気を帯びており、空気もしっとり湿り気がある。足下にところどころ流れる水は池の水源だろうか。耳をすますと「ちょろちょろ」という音がして心地よい。
散策用に渡された木の道。迷路みたいにぐねぐねでかっこいい。
散策路を奥まで進んだところに「夫婦池公園と防空壕あと」という看板が立っていた。なんとこの公園内には、大平洋戦争当時に掘られたと推定される防空壕あとが存在しているらしい。
案内板によると、細い道がけっこうな広範囲に広がっている。
なんとさっき池のほとりで見た洞窟みたいな穴も、防空壕のあとらしい。あんなところまで繋がっているのか。
夫婦池公園と防空壕あと
奥で防空壕の入口を確認できるというので見に行ってみたところ、森の中に防空壕の入口らしき穴ぼこが空いていた。残念ながら防空壕の入口手前にはフェンスが張られ、近くまで行くことはできない。それだけに、なんだか異界への入口めいて見えて、どきどきする。静かな公園の中に、人知れず秘密の道が存在していることに興奮してしまう。
防空壕の入口
さて、再び池の間の堤防を渡って、来た道と反対側に進んでゆくと、湿地の生き物を観察できるテラスがあり、その先は樹林の中に階段が通った散策路になっている。ここも全体にしっとり湿気を帯びた空気が充満している。樹の間から差し込む光が心地よく、物語に登場する森のような幻想的な雰囲気だ。
樹林の散策路
苔のグラデーションが美しい
階段を登り切ると急に視界が開け、車道と住宅街が広がっていた。近くにはおしゃれなケーキ屋さんまであったりして、なんだか別世界だ。
この地にもとからあった森。灌漑用水や防空壕など、その後の時代に作られ周りに住む人たちに役立ってきた設備。そして住宅街。夫婦池公園は、この場所に刻まれた痕跡みたいなものを体感できる場所だった。なんといっても、整備された住宅街の中に何気なく秘密の道が存在してるのが、謎めいていて素敵だ。
...と、樹を探そうと思ってやってきたら、すっかり池とか防空壕に気を取られてしまった。
鎌倉中央公園で見た樹と仲間と思われる、歌う樹を発見したので、いちおうご紹介しておく。
歌う樹。独唱バージョン。
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夫婦池公園
所在地:鎌倉市鎌倉山2-2-2
アクセス:湘南モノレール湘南深沢駅から徒歩約20分
開園時間:8:30~17:15 (休園日:12月29日~1月3日)
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