第3回 車窓からの眺めに話が弾み行ったり来たり
鎌倉駅西口の路地裏にあるカフェ「クレインポート鎌倉」を切り盛りするご夫婦を、江の島の奥でやはりご夫婦でやっているカフェにお連れします。鎌倉駅から江ノ電で江ノ島駅までなら24分のところ、わざわざ大船駅を経由し湘南モノレールに乗って30分前後かけて湘南江の島駅へ。初めてのモノレール体験は、運転席の後ろで立ったままスマホを構えて楽しんだ二人。片道はあっという間の空中散歩でした。
「あれ、もう着いちゃったんですか?」
鎌倉駅から江ノ島駅まで江ノ電で24分かかるのに、鎌倉駅より遠い大船駅からたったの14分で到着してしまったのですから驚くのも無理はありません。ゆっくり走る江ノ電とスピード感あふれるモノレールとのギャップも感じてもらえたはずです。
そうだ、せっかくフリーパスを買ったので、もう1往復していきましょう。さっきは二人ともスマホの画面を通しての景色だったので、今度は座ってゆっくり沿線の風景を楽しんでみては!と提案しようと反対側のホームへ移動。いま乗って来たグリーンラインの車両に再び乗り込もうとすると・・・
「これ、かわいい!」
車体に描かれた江の島をイメージしたイラストに奥さんが食いつきました。そして、またまたご夫婦でフォトセッションが。
さあ、そろそろスマホはしまって、席に着いて大船へ向かいましょう。
「ん~、座っているほうが前後の傾きがよく分かりますね」と旦那さん。
そういえば立って前を見ていると左右の揺れはよく分かります。でも、こうして着席して横の窓から外を見ているとアップダウンするたびに、外の景色と傾く窓枠の角度が変わるので、上ったり下ったりがより実感できるようですね。
「地面が見えて、小高い山や海を望みながらというのはロープウェイに乗って以来かな」
なるほど!ロープウェイやリフトも地形のアップダウンに沿って支柱が立ち、そこに張られたワイヤーに吊られ移動します。湘南モノレールはジェットコースターみたいだといわれますが、ロープウェイのようでもありますね。高速ロープウェイ・・・新たな発見です。
「地に足が着いている乗り物とはだいぶ違うよね」
「沿線の騒音はどうかな」
「地面から伝わる振動がないぶん電車より気にならないんじゃない?」
「踏切、一つもないしね(笑)」
乗る立場から、沿線の暮らしまで気にしはじめた二人。
「わー、家が近い」
「ほらあのお宅、お花がきれい」
「裏山の感じがウチとよく似てる。手入れがたいへんそう」
そして車両は住宅街から街へ。
「高いから遠くまでよく見える」
「あれが武田薬品だからホームセンターがあそこでしょ」
「昨日この下、クルマで通ったね」
あっという間に大船駅まで戻り、またまたUターンして湘南江の島駅に向かいます。
「この広い土地はどうなるのかしら」
「市役所が移転するっている話もあるけど」
「ほら、そこボウリング場!」
「珍しい。鎌倉にはここだけだよね」
実は湘南ボウルは湘南モノレールが経営しているんです。
1往復半で走行感や風景もたっぷり楽しめたようです。そろそろ今日二度目の湘南江の島駅に到着です。
「見た目は全く違うけど、この終着駅感、故郷の長崎駅もいっしょ。それに、海が近い感じも似ていて好きです」
と旦那さん。
湘南江の島駅は地上5階。改装中ですが、4月からこれまでなかったエレベーターが動き出していました。
高さを体感してもらおうと、エレベーターではなくあえて階段を下りて行くと旦那さんが一言。
「あっ、すごい。こんなところに気配りが」
階段の手すりに点字の案内が貼ってありました。
感心しながら1階まで下りると奥さんがこんなことを。
「そうだ、博多で買ったSUGOCAにチャージできるかな?」
そう、4月からPASMOやSuicaといった交通系ICカードが使えるようになったんですよね。
「できた!できた!ほんとに日本中とつながっている。なんかうれしいね!」
とはしゃぐ奥さん。
工事中のフェンスに描かれたおしゃれな駅舎の完成予想図を眺めた後、ここからは徒歩で江の島を目指します。