湘南モノレールの終点大船駅からJR小田原駅までは、30分かからない。
その小田原から出ている箱根登山鉄道が、面白レール第3弾である。
さっきまで海にいたと思ったらもう登山。
これってすごい話ではないだろうか。
鎌倉を出発してまだ2時間経ってない。その短い間に、
路面電車(狭い線路)
↓
懸垂式モノレール
↓
登山鉄道
に乗れてしまうのである。海、空、山を一気に制覇だ。
こんな場所は日本にここしかない。鉄道マニアじゃなくても憧れる3点セットではなかろうか。
しかもこれ全部神奈川県内というのだから、神奈川県すごい。立山黒部アルペンルートは2県に またがっていたが、ここはもっとずっと狭い範囲にこれだけバラエティのある乗りものが集中しているのである。
さっそく小田原から出発しよう。
ただし、小田原=箱根湯本の間は、登山電車区間ではなく普通の線路を走る。本番は箱根湯本から先だ。なのでいったん箱根湯本で乗り換える。
登山鉄道は3両編成
出発して塔ノ沢を過ぎると、最初のスイッチバックが現れた。スイッチバックというのは、急斜面をジグザグに登るために、途中で方向転換する線路のことで、方向転換のたびに、運転手と車掌が位置を交代する。
スイッチバック用の出山信号所は、すれ違いのための待避所にもなっている
ここでいったん停止し、運転手と車掌が交代。この信号所は駅ではないので、乗客は外に出られないが、運転手と車掌は外に出て交代していた。この日は天気は悪くなかったが、雨の日もわざわざ外に出るのだろうか。だとしたらご苦労さまなことである。
それならいっそ、ここから車掌が運転したらどうかと思った。そのとき前にいるほうの乗務員が運転手になるのである。そうすればスイッチバックも簡単ではあるまいか。
ロフティングの小説『ドリトル先生アフリカ行き』に、体の前と後ろに顔があるオシツオサレツ(井伏鱒二訳)という動物が出てくる。それを思い出した。前も後ろも両方が運転手なのだ。
さて今までと反対向きに電車が動き出した。
右に下る線路と左に上る線路
箱根登山鉄道は、深い緑のなかをぐいぐい登っていく。なんでもその傾斜は80パーミル(1000メートル進む間に80メートル登る)もあり、これはふつうの鉄道としては日本一の急勾配だそうだ。
次の大平台駅では、駅がスイッチバックの場所にあるため、双方向行きの電車がいったん横に並ぶのを、ホームから眺めることができる。
大平台駅
箱根登山鉄道内のスイッチバックは合計3か所。それだけ急な路線なのである。
ちなみに3か所あるということは、最終的に箱根湯本駅で進行方向を向いて座っていた人は、終点の強羅駅に着くときには後ろ向きに進んでいることになる。それもなんだか面白い。
さらに勾配だけでなくカーブも急で、ときに半径30メートルの弧を描いて曲がったりする。
前の車両が横向きに見えるほどの急カーブ
なにかと極端な箱根登山鉄道。面白すぎる乗りものではないだろうか。
仙人台のスイッチバック
そうして37分かかって、終点の強羅駅に到着。
この時点で鎌倉駅を出て、まだ3時間経っていない。ここまででも、いろんな乗りものに乗れて、
十分お腹いっぱいになってきたけど、ミッションはまだまだ続くのだった。