史上初(かな?)・モノレール運転士への独占インタビューも
いよいよ今回が最終回。移り変わる時代の中で、
湘南モノレールは、これからいかにあるべきか?
路線に託す「夢」を、大いに語っていただきました。
登場する運転士さん
左/石野智弘(いしの・ともひろ)さん
29歳。乗務歴10年。お若いのに安定感あり。実にモノレール向き。
右/寺田勇一(てらだ・ゆういち)さん
53歳。乗務歴34年。ベテランなのに柔軟。実にモノレール向き。
聞き手/大谷道子、宮田珠己
家族のように、友のように
──おふたりとも近燐の在住ですが、ご家族を乗せるときも?
寺田 片瀬山駅に入っていくとき、「あ、石野くんのお母さんだ」とか、あるよね。で、ちょっと合図したりして(笑)。
石野 アハハ。ありがとうございます。
寺田 揺らしちゃうと、息子経由で苦情がくるから(笑)。うちの息子と妻も、ホームで何回か見たことはありますけど。
──「あれはパパのモノレールだ!」とか、言われませんか。
石野 どうだったかなぁ。でも......まあ、子どもの頃は皆そんなものなんでしょうけど、大人になったら何の仕事するの? って訊いたら、「何言ってんの、モノレールでしょ」って。だから、興味は持っているのかもしれませんね。
──ローカルのおふたりがお勧めしたい途中下車スポットは?
寺田 やっぱ、魅力が多いのは西鎌倉かな?
石野 でしょうね。洋菓子の「レ・シュー」さんとか、和菓子の「茶の子」さんとか、店もいろいろありますし。西鎌倉で降りて散策していただくと、四季折々の鎌倉山ハイキングが楽しめます。
寺田 本当は、トンネルの出口に駅があるといいんだよなぁ。あそこで停められれば、鎌倉山にはいちばん便利。でも、あそこに駅を作ると、トンネルで75キロは出せないか。
石野 逆に、技術の勝負ですね。75キロ出してすぐブレーキ! 止まれるか⁉︎ みたいな(笑)。
──近年は、外国からの観光客も多いと聞きました。今後、湘南モノレールがますます人気が高まるように、こんなふうになったらいいなと乗務員の立場で思うのは、どんなことですか?
寺田 まずは、やっと交通系ICカードの導入が見えてきたので、それはよかったと。今も、日々、お問い合わせをいただきますから。外国人の方からも、「この切符で乗れますか」とか。そういうことなら、片言で何とか(笑)。でも、これから2020年に向けて、もっと多くの方が来てくれると、街も潤うし、我々、湘南モノレールも潤いますから。ハハハ。
石野 あと、工事中でご不便をおかけしているんですが、湘南江の島駅がリニューアルで、バリアフリー化されます(2018年4月1日よりエレベーター稼働予定)。新しくなることで、「あ、こんなところに駅が」って、知っていただけるとうれしいですね。
寺田 モノレールを知らない人、まだ意外と多いもんね。
石野 そうですね。神奈川に住んでいる人からも「あれ? モノレールって廃止にならなかったっけ?」とか(笑)。鎌倉、江の島っていうと、やっぱり江ノ電のネームバリューは大きいですけど、江の島へ行く、その足を、陰で支えるモノレールの魅力を知っていただけたら......いち平社員が言うのもあれなんですが、大船からなら14分ほどで行けるって、大きな魅力ですから。あと、やっぱり楽しんで乗っていただけるといいなぁと。YouTubeにモノレールで撮った動画をアップしていただいて、それに楽しそうなコメントがついていたりするのを見ると、うれしいですね。
──エゴサーチ、するんですか?
石野 「湘南モノレール 動画」とかで、たまに。
寺田 故障のときのもあったりするよね(笑)。故障して大船駅に停まっていたのが、後続と連結して6両で出て行く様子とか。まあ、珍しいからなぁ。通常の営業じゃ見られない風景だし。
──乗客の方により楽しんでもらうために、日々、仕事上で心がけていることって、どんなことでしょう。
寺田 えーと、僕はまず、すごく早く出勤しますね。乗務の1時間前には来るようにしていて、こう、心の余裕が保てるように。余裕がなくなると、何かとミスをしがちだという気がするので。ゆったりしている中で、気持ちが仕事に向かっていくんだと思うので。体に仕事が入るまでに温まっておく、というか。
石野 ウォーミングアップ、ですね。私の場合は......安全とか定時運行とかっていうのは、できて当たり前なんですけど、それに加えるなら、さっき言ったこととも通じるんですが、やっぱり楽しんで乗っていただくこと。旅行に来たご家族や友だち同士、カップルの方にとって、旅の思い出のひとつになってもらえればうれしいし、毎日、通勤や通学で乗る方にも、快適に乗っていただけるように。朝なら「よし、行ってくるか」という気持ちになれたり、夜には「ああ、帰ってきたな」という気持ちで、くつろいでいただけたら。
寺田 たまに夕方や夜、「あ、このお客さん、朝に見た人だ」っていうの、あるよね。ぜんぜん知らない人なんだけど、「お疲れさまです、お帰りなさい」って思ったりして。
石野 ありますね。あと、通学の子どもさんたちを見ていると、10年くらいしか乗ってない私でも、「あ、おじいちゃんとおばあちゃんに連れられてた子が、大きくなってる」とか。制服が変わって「もう中学生か」「高校生になったな」とかも。
──へぇー。「あ、彼女ができたな」とかも、気づけそう。
石野 そこまでいくと、ちょっとアレだと思うんですが(笑)。
──見守り、見守られる関係っていいですね。運転士さんの愛を感じました。長時間、ありがとうございました!