フリーきっぷを存分に生かし、また延々と戻ってみます。車内で子供が「揺れる揺れる〜!」って楽しがってる。わかるわかるよ。街の中を飛び回ってるみたい。楽しいよね。
上空から地面を歩く民を見下ろしていると、富士見町の手前のあたりでは商店街とは言わないまでも多少お店がありそう。喫茶店が見える。富士見町で下りて、お得意の街歩きをすることにします。
富士見町はかなり簡素な駅で、狭い道の脇に窮屈な感じで駅の出口だけがあり、出てもすぐに店などはない。「富士見町駅」と書かれた赤文字の丸ゴシック体の看板が昭和の香り。いきなりトタン壁の「金物小野田商店」があり、「砂利・砂・セメント・ブロック」などと書いてあってこの殺風景さは私の好みです。
周囲をぶらっとひと回りすると、おや、なんだかものものしくフェンスで囲まれた一帯があるんですが。草が生い茂っているけど、よく見ると線路がある。もう使われていない踏切もある。懸垂式だから線路とは縁がないはずのしょもたん、この線路と何の関係が?
どうやらここ、JR東日本大船工場の引込線で、いまは廃線になってしまったらしい。しょもたんとは何の関係もなかったけど、こういう「滅び系スポット」大好きです。殺風景、大好きなんです。富士見町周辺は湘南モノレール内の殺風景要素を一手に担ってるみたいです。
気になって廃線跡をもうちょっと突き詰めようかと思ったけど、いや今日はしょもたんの取材なのだ。よそはよそ、うちはうち。JRはJR、しょもたんはしょもたん。
で、しばらくしょもたんのレールの真下の道を歩いてみる。この道は片側一車線で、建物もそんなに余裕なく建っているので、幹線道路というには狭い。高速道路が上に走っているような例と違ってレールは細いので圧迫感はあまりありませんが、頭上にずーっと何かがあるという違和感はものすごくあります。まあまあ近いところにあるレールに沿って不意にぐおーんと車輌が通り過ぎていくのは毎回びっくりです。こちらを気にせず通り過ぎていく巨大動物しょもたんをサファリパークで見てる感じ。
道の脇にドスドスと容赦なく突き刺さっている、レールを支える柱の異物感もなかなか強い。つまり、細い道にも懸垂型モノレールは作れるんだね。可能性を感じる。全国の街に作ろうよコレ。
カラオケスナックなども並ぶ案外古めかしい道沿いにある、「カフェ豆」というほんわか喫茶で一休み。木のぬくもりを感じるいい喫茶店です。とりあえずここはこんなもんで次の駅行きますか、と店を出ると、斜め上からヌッと珍獣しょもたんが登場して通り過ぎていく違和感。この違和感、なくしたくない。
ほじくり湘南モノレール(3)
2018.02.14
能町みね子
北海道出身、茨城県育ち。
著書に、『くすぶれ!モテない系』(文春文庫)、『雑誌の人格』『雑誌の人格2冊目』(いずれも文化出版局)、
『お家賃ですけど』(文春文庫)、『うっかり鉄道』(メディアファクトリー)、『能スポ』『能サポ』(いずれも講談社文庫)、
『逃北』(文春文庫)、『ほじくりストリートビュー』(交通新聞社)など。
著書に、『くすぶれ!モテない系』(文春文庫)、『雑誌の人格』『雑誌の人格2冊目』(いずれも文化出版局)、
『お家賃ですけど』(文春文庫)、『うっかり鉄道』(メディアファクトリー)、『能スポ』『能サポ』(いずれも講談社文庫)、
『逃北』(文春文庫)、『ほじくりストリートビュー』(交通新聞社)など。
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