前回、湘南モノレールにあった、開業時の古写真のうち、前回は、食料品店「泉屋」を探しに行き、見事、その場所を探し当てた。
今回も、ライターの宮田さん、井上さんと私、西村。そして、湘南モノレールの池田さんとともに、モノレールの古写真からその場所を探し当てたい。
なにしてるんだろう?
さて、次に探し当てたい場所は、この場所だ。
交差点の上のモノレール。農地と空き地の広がるなかを、フューチャーの権化、モノレールが滑走している。モノレールの部分だけは、未来っぽいが、あくまで40年以上前の写真である。
あらためて写真をよく見てみる。
モノレールは、写真奥のすこし小高い丘になっているところにレールが伸びている。
レールや橋脚の右側は畑だろうか。道の両脇には看板が立っているが、プリントアウトした写真は解像度が荒く、文字が読み取れない。
そして、真ん中の自動車の横には、大きく体を折り曲げてお辞儀しているおじさん(おそらく)が写り込んでいる。
このおじさんは一体何をやっているのだろうか? ジョギング中に体操でもやっているのか? なんだか気になる。ひとまず、この写真は「立位体前屈」と命名した。
どこにあるのか?
どこでしょうねここ
西村「ひとまず言えるのは、たぶんここ、交差点の上ですよね、十字路の上をモノレールのレールがあって、しかも後ろの方にちょっと小高い山か丘がある場所......」
宮田「大船から、今いる湘南深沢までくる間に、ちょっと小高い丘があったとおもいますけど、その向こう側に十字路の上を通過している場所がありましたよ」
井上「ひとまず、そこにむかってみましょう」
湘南町屋駅にやってきました(左から、ライターの井上さん、宮田さん、湘南モノレール池田さん、撮影西村)
湘南町屋駅は、三菱電機の大きな工場があり、その最寄駅だが、駅全体がすこし小高い丘の上にあり、モノレールのレールはその丘を越えるように建てられている。
湘南町屋駅から丘を下る
レールに沿って、大船方面に向かって歩くと、下り坂になっている。
立位体前屈の写真は、撮影者からみて、レールの右手に橋脚があり、下の道路は写真の奥に向かって上り坂になっているように見える。
したがって、湘南町屋駅から、大船方面に下った先にある交差点は、橋脚の位置、交差点と坂道の配置としては、矛盾がない。
到着
「山崎」という交差点に到着した。
宮田「ここです、ほら、見比べてください。交差点に、橋脚、ぴったりですね」
井上「たしかに......ぴったりなんですけれど、なんだかちょっと違和感ありませんか?」
西村「どうも『ここだ!』という感じがしないですね......なんでだろう」
池田「建物ができて、雰囲気が違うからでしょうか」
しばらく「立位体前屈」の写真と、実際の風景を見比べるものの、やはり違和感が次第におおきくなってきた。
交差点の道の交わり方が、「立位体前屈」の方は直角に交わっているけれど、山崎の交差点は斜めに交わっているのだ。違和感の原因はそこにあることがわかってきた。
ということは、つまり「立位体前屈」の場所は、ここではない。捜査はふりだしにもどった。(一回いってみたかったセリフ)
高解像度で見てみたら
さて、まったっく手がかりがなくなってしまった。この写真。もういちど、写真に写り込んでいるものを詳しく見ていきたい。
プリントアウトした画像を目を凝らしてよく見てみると、橋脚の柱の上の方になにか文字がかいてあるのが見えてきた。
ぼやけててよくみえない
西村「橋脚の番号がわかれば、どこなのかすぐ分かるんですが、ぼやけててよく見えないですね......」
井上「34ですかね......数字はわかりますけど、その上がわかんないですね」
西村「スマホに入ってる解像度の高い写真、確認......します?」
「深西34」?
宮田「うーん、これは『深西34』ですね」
あっさり場所が特定されてしまった。「解像度の高い写真を確認する」というのは、なんだがちょっとインチキなような気もするが、別にルールを決めたわけではないので、なんら後ろめたいことは無いはずだ。
それはともかく......『深西34』ということは、湘南深沢駅と西鎌倉駅間にある34番の柱だ。
とりあえず、我々は、西鎌倉駅に向かった。
湘南深沢駅から、西鎌倉方面へ向かってトンネルを越えたすぐ後に、交差点の上を通過する箇所を車内からみつける。
あっ
今、交差点の上通りましたよ!
奥に山があって、坂道の下りきった場所にある交差点というぴったりの場所だ。
つい、車両のなかでうぉーと声をあげてしまう。
西鎌倉駅を降りた我々は、橋脚番号を確かめながら、さきほど車内から確認した交差点に向かう。
橋脚の向きが逆ですね......
橋脚のついている向きが逆向きなのが気になったのだが......到着してみると。
ここだ!
橋脚は、この交差点から逆向きになっていた。比べるとたしかに道路と山の位置、レールの向きなどはピッタリだ。
橋脚番号を確認してみる。
深西34!
深西34。やはり当時と同じ。ここに間違いない。西鎌倉にある赤羽交差点が、正解の場所であった。
当時、野原だった場所には、ファミリーレストランができており、左側の雑木林だったところは、建物が建っている。
モノレール以外は森や雑木林、農地だったところが、40年の歳月でこれだけ変貌したのだ。
モノレールの開通によって、宅地開発が促進され、景色が様変わりするほどかわったものの、変貌のきっかけのひとつとなったモノレールは、逆に40年前と変わらずそこにあり続けている。皮肉といえば皮肉なんだろうけれど、そこがおもしろいところでもある。
せっかくなので立位体前屈を再現
あの橋脚は、40年以上もまえから、ここにずーっと立っているんだなあ。と考えると、なんだかしみじみとした思いがこみ上げてきそうになる。
ここまできたのなら、あの立位体前屈おじさんの真似をして記念写真を撮りたい。
当時の再現写真をとります
モノレール来た!
......
......
昔と違って、交通量がめちゃめちゃあるのでタイミングが難しい......。
あ、来た!
どうか?
右が1970年頃、左が2017年
「立位体前屈」の写真は、西鎌倉の赤羽交差点あたりであることがわかった。
立位体前屈のおじさんは、たぶん......ジョギングかなにかをしていたのではないだろうか......。
いずれにせよ、古写真ふたつめもなんとか場所が判明した。
なお今後は、解像度の高い写真を見るのはOKということにしたい。
次回は「擁壁のある場所」です。