湘南深沢駅をモノレールで初めて訪れた人にとって最初に受ける印象は、やけにだだっ広い、であろう。
路線の西側、大船駅から乗り合わせれば車窓の右側に広がるのは、見渡す限りの荒涼とした、雨天もあいまってその先が見えないほどのだだっ広い敷地であった。
ここが以前はJRの車両工場であったことは見聞きしてきており、住居・商業・行政施設が一体となった大規模な鎌倉市による再開発計画があるにはあるようだが、今のところまだ着手にはおよんでいないようだった。
宮田さんからは
「地元ではサバンナと呼ばれているそうですよ」
なるほどそうかもしれない。雨降ってるけど。
「えーみなさん」とまずひと息おいて、
「私たちは今からあのサバンナの先にあるドンツキに行きます。いわば『サバンナドンツキ』ですね」
湘南深沢駅から、この車両工場跡地を敷地外周沿いにただひたすらにほぼ半周歩いて、駅からはほぼ反対側にあたるドンツキを目指す。片道だけで1キロ近くはある。
「そこにいたるまで他にドンツキはいっさいございません。ひたすら歩くだけです」
ふだんドンツキクエストを主催している中で、不安になってくるのはこういった場面である。
日本全国、たいていの町ならばどこかにドンツキはあるもの。しかしよほどドンツキに恵まれた町でなければ、ドンツキを渡り歩く中で空白区間となる、ドンツキの無い箇所はどうしても存在する。
長い距離歩けば体力も消耗するし、そのドンツキでさえ、参加者に心から楽しんでいただけているかはわからない。
サバンナドンツキ
そしてようやくたどり着いたドンツキは、鎌倉市の青果市場や自動車整備工場を抜けた奥にあり、さいごはJR車両工場跡地で突き当たっていた。跡地とはフェンスで遮られており、我々のいるドンツキ側からはフェンス越しに跡地のサバンナが一望できる。
サバンナドンツキからの眺め
ドンツキは一般的に路地の奥地にあって、建物に挟まれたやや日の当たりにくい空間であることが多い。その点ここは空が広く開放的で、明るさを感じさせるドンツキであった。
やや雨が弱まると、サバンナの先にはモノレールの高架橋が見え、サファリパークの上空をモノレールが横切るような、異質な風景を望むことができた。
最近では私どもの中ではこの、行き止まりの先にさらに展望が開けるタイプが好評で、「スケルトン型」と呼んで珍重しているが、その理由についてヤスシコーチ理事には一説あるらしく、
「ミニ四駆ってあるじゃないですか。最初は爆発的に売れてたけど、そのうち飽きられて売れ行きが落ちてくると、次に出すのが同じ型だけど本体が透明なだったりして。第二弾とか後継機で出てくるのってこういうスケルトンなんですよきっと」とのこと。
ああだから普通のドンツキに慣れている我々には新鮮なんだねぇ。
ひたすら歩いて来た甲斐もあってこちらのドンツキは一行に好評で、隣接する青果市場内には昼食のとれるハワイアンレストランもあり、木村理事からも
「サバンナの先にオアシスを見ている気分。ストーリー仕立てのようで良くできている」
とのこと。
車両工場跡地の再開発が始まるころには失われるであろうサバンナドンツキ、訪れるならばおはやいうちに。そのときはぜひモノレール駅から歩いて来てみよう。