起伏が多い丘陵地を駆け抜ける湘南モノレールは、地形とのせめぎ合いがとても面白い。モノレールは電車に比べて勾配の変化に強い乗り物なので、道路が坂道であれば、軌道もそれに沿って斜めになる。地形が空中で「見える化」されているのだ。これほどアップダウンが視覚的にわかりやすい乗り物は、遊園地以外にはないかもしれない。
道路とともに高度を上げる軌道の様子には驚嘆してしまう
地面すれすれを駆け抜ける丘越えの区間も楽しい。リブがバリバリに入った桁、支柱との接合部、桁の上に設置されたケーブル類など、構造物や付帯物のディテールが視線の高さに現れるのだ。遥か上空にあるはずのものをじっくり観察できる希有なチャンスは、しっかり活用したい。
もちろん間近に通過するモノレールの様子を至近距離で見ることもできるのだが、ちょっと気を抜くと普通の電車のように見えてしまう。逆に言うと、懸垂式モノレールの魅力の源泉は、なんと言っても車両の直下の空間にあることが再認識できる。
地表を一部開削して道路の脇を低位置で通過するので、構造物の細部をよく観察できる
湘南モノレールの車窓における最大の見せ場は、なんのためらいもなくトップスピードで山岳トンネルに突入する場面だろう。モノレールは平坦な都市にあるはずという思い込みが見事に蹴散らされ、自分の常識なんてちっぽけなものなんだという普遍的な事実を突きつけられる。さらに、トンネル底部の断面形状も面白い。道路トンネルのように路面をつくらなくていいので、中央部分を低くして集水するようになっているのだ。
トンネルの様子は車内から観察できるので、興奮しすぎて見逃さないようにしたい