モノレールを土木構造物として観察する際の最も基本的なポイントは、「軌道が道路の上空にある」ことだ。連続した交通システムを新しくつくるためには連続した用地が必要であり、それに最も適しているのが既存の道路である。その両者をセットで観察すると、街に後から挿入されたモノレールの成り立ちが見えてくる。
僕が住んでいる街にある千葉都市モノレールは4車線の立派な道路の上につくられているが、湘南モノレールの場合は2車線かつ十分な歩道幅員がない平凡な道路だ(実はこの道路、かつて「京浜急行線」という有料道路だったのだが、それはまた別の話)。この用地の狭さが、適度で特殊なスケール感の源泉になっているのだろう。沿線の建物の軒先がとても近く感じることは極めて特徴的だ。
なんの変哲もない道路にしれっとモノレールが挿入されているところがすごい
モノレールの軌道は鉄道と同様に大きな曲線で構成しなければならず、細かく折り曲げるわけにはいかない。しかも、基本的には交差点を含む下の道路用地におさまるように、全体の形をやりくりすることになる。そうして整えられた軌道の滑らかなラインには、印象的な美しさが宿っている。
また、軌道支柱の位置は複雑なパズルを解いた結果だ。中央分離帯はない道路なので左右から必死に支えなければならないし、合理的な構造物にするためにはできるだけ等間隔に並べたい。そうして決められた支柱は、歩行者の通行の邪魔をしているような箇所は多少あるけれど、あまり目くじらを立てずに調整の苦労を汲み取ろうとすれば、そこにも面白さが感じられるだろう。
モノレールの軌道をなんとか調整して生まれた滑らかなカーブと、それを支えるためにがんばっている支柱たち