湘南モノレール沿線を「路上園芸」目線でひたすら歩きまくった。乗車時間わずか14分、直線距離にすると10キロにも満たないが、生活密着型の園芸からおばけのような怪獣植物まで、色とりどりの路上園芸を味わえたのは、アップダウンに富んだ地形ならではの醍醐味だろう。 しかしながら、とにかく足を使って探すしかない路上園芸。あちこちの道を行ったり来たり登ったり下ったりと歩きまくっていると、これは何かの修行だろうかと自問自答したくなる瞬間もあった。最後の方は、頭の中の97%くらいを「ビール飲みたい」が占めていた。 GPSの入ったアプリでログを取りながら歩いていたら、途中で携帯電話の電源が急に落ちてうんともすんとも言わなくなり、見知らぬ場所で路頭に迷いそうにもなった。しかし、あっちは山、あっちは海、とわかりやすい地形だったため、モノレールの線路を頼りになんとか終点の湘南江の島駅までたどり着き、近くの酒場で無事にビールにありつくことができた。 全くもって地形さまさまである。
鼻毛
それにしても自分自身は植物を育てるとすぐ枯らしてしまうのに、どうして路上園芸をひたすら追いかけてしまうのだろう、とたまに考える。 花屋の店頭に並べられるような花と違い、路上園芸はたいてい、存在感をアピールするわけでもなく、さして注目もされず、ひっそりとさりげなく街の風景に溶け込んでいる。 軒先に可愛らしく植木鉢が並んでいれば、まだ、風情があるねと心穏やかに眺めていられる。 が、植物は生き物。時に人の手に負えなそうな勢いで成長してしまう。そうなると、とたんに不気味さを増す。
パイロン山がどかーんと噴火
植物は人間とは別の時間軸やルールで生きている。整然と見える街にふとした瞬間ほころびが生じ、別世界があらわになる。それを目の当たりにすると、見知った街でもまるで別の場所に旅しているような気持ちになれるのだ。 路上で異様な存在感を放つ植物と、それを追い求めウロウロ徘徊する自分。街の風景の中で、ともに怪しく浮いている気もしたが、気づかなかったことにする。