大船と湘南江の島の間を走行する湘南モノレール。路上園芸探索の出発地点は大船である。
路上園芸スポットは当然ながらガイドブックには載っていない。「こっちがなんだかにおうぞ」という嗅覚を頼りに、ひたすらほっつき歩くにつきる。
地図でいうと入り組んだ道や住宅が密集していそうな場所などが特に「におう」。人の生活の匂いが色濃い場所は園芸率も高く、建物が密集して敷地内に園芸スペースが取りづらいと自然と園芸欲(と勝手に命名)が路上にはみ出しがちだからである。
そんなわけで、まずは繁華街と住宅街が入り混じる大船〜隣駅の富士見町まで歩いてみることにしたところ、早速いい路上園芸発見。
喫茶店のテントをぶち抜く笹
まるで噴煙のごとく、笹が店先のテントをぶち抜き二階部分まで立ち昇っている。「ずぼずぼっ」っていう効果音が脳内再生されるような、見事な生命力のはみ出しっぷりである。お店の方にとっては手入れに頭を悩ませているかもしれないが、こういう野性味あふれる植物を目の当たりにすると、どこか清々しさを覚え、つい興奮してしまう。しょっぱなからこんな路上園芸に出会えるとは幸先がいい。
引き続きダウジングのように嗅覚に従いキョロキョロしながら、さらに歩を進める。
大船駅付近の繁華街を抜けると、なだらかな土地に住宅街が広がっている。なんてことはない住宅街に見えるが、こんな場所にこそ路上園芸的お宝はごろごろ眠っている。
傍目から見たらただの気まぐれな散歩だが、気持ちはハンター。アンテナをビシビシにとがらせ、目の端にちょっとでも「おや」と思うものがあればすかさず目を向ける。ほんもののハンターと違って戦利品を実際に持ち帰ることはできないが、こっそり写真に撮り納め、あとで見返してニヤニヤするのが醍醐味なのだ。
毛むくじゃらの小動物を捕獲
さて、静かな住宅街をぶらぶら歩いていたところ、公園に何気なく生えている木に違和感を覚えた。よくよく見たらなんと、フェンスをすり抜けようとしていた。
フェンスをすり抜ける木
なんだこれ。写真の合成に失敗しちゃったみたいだ。
うっかりここに生えてしまったがために、がんじがらめになってしまった過酷な運命の木である。しかしそれでもなお「フェンスなんてありませんけど」的佇まいで堂々と葉を茂らせている様子に胸打たれ、人気のない公園で一人、あらゆる角度からばしゃばしゃとシャッターを切ってしまった。
近くを歩く親子連れが足早に通り過ぎて行ったのは気のせいだっただろうか。
テントをぶち抜く笹にしても、フェンスをすり抜ける木にしても、人が定めた境界線を飄々と無視するさまがたまらない。 そんなこんなであちこちで立ち止まってしまうので、なかなか目的地にたどり着けない。大船駅から富士見町駅へはグーグルマップによれば徒歩17分とあるが、気づけばもう1時間以上、狭い範囲をうろうろしている。このままではあっという間に日が暮れてしまうので、さっさと湘南モノレールに乗って次なる街へ移動することにする。(つづく)