湘南モノレールは山あり谷ありのルートが特徴だ。
  大船から湘南江の島までの6・6キロ間で、最も標高が高いところは60メートルちょっと、最も低いところは20メートル弱なので、40メートル以上の高低差がある。
  もっとも急な勾配は、74パーミル。
  これは1000メートル進むと74メートル上がる勾配で、ケーブルカーのようにワイヤーロープで引っ張ったり地面のギザギザに歯車を引っかけながら上るものを除いた鉄道のなかで、日本一急な箱根登山鉄道の80パーミルに匹敵する。
  モノレールが登山鉄道に匹敵って、どういうことだろうか。
  無茶にもほどがあるのではないか。
  そんな場所はロープウェイの出番のような気がする。
  じゃなかったらジェットコースターの。
  まあ、ジェットコースター界で日本一急勾配なのは、富士急ハイランドにある『高飛車』で、ファーストドロップの傾斜角は121度ある。直角の90度より急ってどうかしており、そんなのに比べると遠く及ばないものの、湘南モノレールは電車界においては日本でもトップレベルの坂を走っているわけである。
  そしてさらに珍しいのは、2ヶ所のトンネルをくぐることだ。
  懸垂式モノレールでトンネルをくぐるのは日本ではここだけ。世界でも滅多にない光景だ。床にレールのないトンネルのなかを走っていると、宇宙船か潜水艦に乗っているような気分になってくる。
  ここは実にジェットコースター感あふれるスポットである。
  懸垂式モノレールでトンネルをくぐるのは珍しいが、インバーテッドコースターがトンネルをくぐるのは珍しくない。それどころか、トンネルや屋内で加速するタイプが多い。なのでトンネルの出口に向かってぐいぐい加速しているところは、ジェットコースターを思い出してワクワクしてくるのであった。
  とくに湘南深沢から西鎌倉へ向かう鎌倉山トンネルでは、急勾配を下りながら加速し最高時速は75キロに達するというから速い。
  全長6・6キロしかない路線で、そんなに飛ばす必要があるのだろうか。
  このへんの無駄に速いところもジェットコースターを彷彿させる。
  そうしてもう1ヶ所、片倉山のトンネルを抜けると終点の湘南江の島駅に到着するのだが、このときトンネルを出た瞬間、ビルの5階の高さである。
  それまで大地の下を走っていたのが、いきなり5階。これもまた通常の乗り物ではあまり体験できないスペクタクルな味わいなのであった。(つづく)

山あり谷ありのルート
2017.11.15
 
			
					宮田珠己
				
				
					エッセイスト。
ジェットコースター、変なカタチの海の生きもの、巨大仏、ベトナムの盆栽、迷路のような旅館、石などに興味を持ち、好き勝手に執筆。旅が大好きだが、飛行機が苦手で苦悩している。
主な著書は『ジェットコースターにもほどがある』『晴れた日は巨大仏を見に』『ふしぎ盆栽ホンノンボ』『四次元温泉日記』『いい感じの石ころを拾いに』『だいたい四国八十八カ所』『ときどき意味もなくずんずん歩く』『私なりに絶景』『ニッポン47都道府県正直観光案内』など。
			ジェットコースター、変なカタチの海の生きもの、巨大仏、ベトナムの盆栽、迷路のような旅館、石などに興味を持ち、好き勝手に執筆。旅が大好きだが、飛行機が苦手で苦悩している。
主な著書は『ジェットコースターにもほどがある』『晴れた日は巨大仏を見に』『ふしぎ盆栽ホンノンボ』『四次元温泉日記』『いい感じの石ころを拾いに』『だいたい四国八十八カ所』『ときどき意味もなくずんずん歩く』『私なりに絶景』『ニッポン47都道府県正直観光案内』など。
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