ひと口にジェットコースターといっても、さまざまなタイプがある。
まずそこから整理しておきたい。
一般的なのは、トロッコのような列車に乗ってレールの上を走っていくタイプで、大きく分けてスチール製と木製がある。これについては説明は不要だろう。
これに対しレールの下にリフトのように座席がぶらさがっているものを、インバーテッドコースターと呼んでいる。これはトロッコ型に次いで数が多い。
そのほか立って乗るジェットコースターや、
シートだけがあって車体がなくむき出しのまま走るフロアレスと呼ばれるタイプ(日本にはない)、
車体が横長で横に8~10人が並んで乗り、レールの横にはみ出しているダイビングマシンと呼ばれるタイプ(これも日本にはない)、
腹這いになって空を飛ぶようなスタイルで乗るフライングタイプ(USJの「ザ・フライング・ダイナソー」やナガシマスパーランドの「アクロバット」)、
座席でレールの横ででんぐり返りながら走る四次元タイプ(富士急ハイランドの「ええじゃないか」)、
など、ひと口にジェットコースターといっても、その形はさまざまである。
湘南モノレールが近いのは、インバーテッドコースターということになるだろう。
レールの下にぶら下がって走るのはこのタイプだけだからだ。(厳密にはサスペンデッドコースターといって、船のようなゴンドラに乗ってレールの下を走るタイプもあるが、主に子供向けが多い)
ではインバーテッドコースターの魅力とは何だろうか。なぜわざわざレールの下を走るのか。
そこには足元に何もなくてスリルが増すというだけでないもうひとつの理由がある。
それは振り回しやすいという点だ。
インバーテッドコースターは、通常のトロッコ型にくらべて振り回しやすい。ダイナミックな動きが可能になる形なのである。
どういうことか説明しよう。
たとえばループで考えてみる。
コースの途中にある垂直ループはジェットコースターの動きのなかでもとくにスリリングな部分だが、急激な旋回では遠心力の働きで乗客に大きなGがかかることになる。垂直ループを回っている間、乗っている人は首や肩がいつもより重くなり、ぐいぐいと床に押さえつけられるような不自由さを感じるのである。
ところが、インバーテッドコースターの場合は、遠心力がレールから離れる方向に働くから、乗客は体が床に押さえつけられることなく、逆に空に解放されるような気持ちで旋回する。
垂直ループに限らず、これは横旋回の時でも同じ理屈で、ぶらぶらしているおかげで、急なカーブでも気持ちよく曲がることができるのである。
トロッコ型のジェットコースターには大きなコブ(キャメルバックと呼ばれる)を上がったり下りたりするタイプが多く、インバーテッド型のジェットコースターにループや旋回が多いのは、そういう理由による。ぐるんぐるん振り回しても乗り心地が悪くならないのが、インバーテッドの魅力というわけである。
そして懸垂式モノレールにも同じことが言えて、レールの下にぶら下がるのはカーブの多い路線に都合のいい形なのである。湘南モノレールが懸垂式なのは、ジェットコースターみたいにダイナミックに走らせたいのかもしれない。そのうち途中に垂直ループができたりするのでは?
垂直ループのあるモノレール。いいかもしれない。
さらに付け加えるなら、懸垂式モノレールのほうが跨座式モノレールよりも風に強いとも言われている。これも車体の重心がレールの下にあることが関係している。上に乗っかっているものは風で落ちる可能性があるが、ぶらさがっているものはぶらぶらして風を受け流すから、落ちる可能性が低いわけである。
こうして懸垂式は、跨座式では不可能なダイナミックなルートを走ることが可能になったのである。(つづく)