モノレールの形式をざっくり分けると、軌道から車両がぶら下がる「懸垂式」と、軌道の上に車両がまたがる「跨座式」の2種類になる。湘南モノレールを含む懸垂式は少数派だ。でも、足下がスカスカでちょっと不安になる車両の姿や乗車時の揺れも含めた空中浮遊感は、圧倒的な魅力をもたらしている。それはつまり、道路を走るバスや線路の上を走る電車など、僕たちが常識として理解している乗り物にはない非日常性だ。少し前の時代の未来を見るような懐かしさもあり、その愛くるしさにはついついニヤニヤしてしまう。
懸垂式の湘南モノレールは、軌道からぶら下がっているがゆえの魅力が満載
懸垂式は軌道桁の中に車軸やモーターなどの駆動部が位置するので、天候に左右されにくく、騒音が少なく済んで感電の危険性も低い。さらに、重心が軌道よりも低いために速度が高くても安定しやすいなど、安全面は得意分野だ。そしてなにより、車両がかわいらしく見えることは見逃せない。床下に駆動部がある跨座式と比べると、そのコンパクトさは顕著に感じられるだろう。
跨座式で2両編成の沖縄都市モノレールの車両もかわいいけど、よく見ると全体的にずんぐりしていて大きい
もちろんその一方で、デメリットもある。駆動部が入る軌道桁は大きくなるばかりか、下面が閉じた堅牢な箱にできないがゆえに、補強のためのリブという縦向きの細い部材が桁の外側に出現することが一般的だ。つまり、ちょっと鬱陶しい見た目になりやすい。さらに、桁を空中に渡すための軌道支柱や基礎も含めて、構造物全体の規模がどうしても大きくなる。しかも、各所に複雑な細工を要するために、コンクリートではなく鋼材が使われることが多い。その結果、輸送の役割に比べると大げさに見えるし、建設コストや維持管理コストは高い方向に振れやすい。逆に駅のホームが低くできることはメリットになるけれど。
このようなメリットとデメリットの両方をある程度知っておくと、構造物を眺めたときの感激の質が向上した気分になる。その快感が土木構造物鑑賞の第一歩だ。
懸垂式の千葉都市モノレールと跨座式の沖縄都市モノレールを見比べると、形式の違いによる構造物の規模が理解しやすい