さて、サフェージュ式と並ぶもうひとつの懸垂式は、ランゲン式というもので、こちらは軌道部分がむき出しである。文字通り1本しかない鉄のレールに自転車みたいに車輪が乗っかり、台車から巨大なS字フックみたいな部品でレールの下の車体を吊っている感じである。懸垂式の家元であるヴッパータールのモノレールがこの方式。日本では上野動物園の東園と西園を結ぶ路線が、ランゲン式の変形というかアレンジされたタイプで、車輪がゴムタイヤ、レールが軌道桁になっているものだ。こちらは上野式とか、メーカー名をとって日本車輌式と呼んでいるようである。
ランゲン式(ヴッパータールモノレール)次回くわしく解説するよ
上野式/日本車輌式(上野動物園モノレール)走行メカニズムが桁の上に乗ってるところに注目
日本で営業している懸垂式にはもうひとつ別の形式がある。広島のスカイレールがそれで、車両のぶら下がり方の分類でいうとIビーム式という。I型断面の軌道桁をつかむように車輪が付いている。要するにプラレールの懸垂式モノレールのような感じのメカニズムだ。また駆動の方式でいうとロープ駆動式というタイプに分類されるらしい。
Iビーム式/ロープ駆動式(スカイレール)こんなすごい急斜面もすいすい
小さく丸っこい車両が無人運転で動くので、見た目は思いっきりロープウェイである。頭で常にモノレールであることを意識してないとモノレール感が維持できない。でも始発駅からはるか山の上までぐいぐいと登っていく乗り心地は独特のもので、こんな山の中で宅地造成をやったデべロッパの気が知れないと思いつつも、懸垂式があるだけで住んでみたくなったりもするから、総合的に判断してやはりここはすばらしい高級住宅地だ。
ときおり発作的に懸垂式に乗りたくなる。鉄道であって鉄道でないようなところとか、カーブでの腰の振れ感とか、下がなんにもなくてすーすーする感じとか、レトロフューチャー的でおもちゃっぽいとか。懸垂式はそういう非日常の感覚をもたらす乗り物であってとっても素敵だ。空飛ぶ絨毯なのか何なのか、謎の飛行物体に乗って超低空で飛ぶ夢をたまに見るので、もともとそういう願望が自分には強くあるらしい。限定的ではあるが夢が現実になる乗り物に数百円で乗れるというのは、考えてみるとすごいことだ。
こんな異次元の乗り物が日常空間にある大船のみなさんがうらやましい
さて、次回はその懸垂式の元祖家元、ヴッパータールを訪ねます。お楽しみに!(つづく)