江の島への近道 湘南モノレール株式会社

■ 知られざる名刹龍口寺

 湘南モノレールの「湘南江の島」駅から東へ150メートルほど歩くと、江ノ電が横切る大きな交差点に面して、立派な仁王門が現れる。
 日蓮宗の名刹寂光山龍口寺である。
 知ってましたか、龍口寺?

miyata_ryukouji1_01.jpg
        (撮影:宮田珠己)

 鎌倉へ寺社観光に行こうと思ったとき、鶴岡八幡宮や鎌倉大仏や長谷観音のことを思い浮かべる人は多いと思うが、龍口寺はどうだろう。少し詳しい人なら、建長寺や銭洗弁天、さらに東慶寺なんて名前を口にする人もあるだろうけれど、龍口寺は知らないのではあるまいか。

 日蓮上人に詳しい人は、そこが日蓮4大法難の地であることは知っているにちがいない。日蓮上人は、鎌倉幕府によって龍ノ口刑場で危うく斬首されるところだったのである。
 鎌倉時代後期、蒙古の襲来や、飢饉、疾病の蔓延などを憂い『立正安国論』を奏上した日蓮上人に対し、幕府はこれを中傷と受け止め、幕閣による評定を経ることなく、上人を刑場へと連行した。そうして翌日の深夜、上人を土牢から引き出し、敷皮石に座らせて斬首の準備を整えていたのだ。
 このとき日蓮上人は「法華経の行者として法華経に命を捧げることはむしろ喜びである」と泰然自若としていたとお寺のパンフレットには記されている。
 ところがまさに斬首されようかというとき、江の島の方から満月のような光るものが飛んできて、首切り役人の目をくらませたため、刑の執行を行うことができなかった。そしてちょうどそこへ幕府から処刑中止の使者が到着したのである。

miyata_ryukouji1_02.jpg

 詳細は各自調べていただきたいが、ともあれ日蓮上人はこの地で命拾いし、その後この龍ノ口刑場の跡地にできたのが龍口寺なのだ。
 江の島の方から飛んできた満月のような光るものとは一体なんだったのか。それについては、本サイト「ソラdeブラーン」内の「ぶら喜利」で、井上マサキ氏率いるメンバーが推理しているので、そちらもご覧ください。
 http://www.shonan-monorail.co.jp/sora_de_bra-n/2019/02/post-201.html
 
 そんなわけで日蓮宗にとっては非常に重要なお寺である龍口寺だが、一般観光客にはまだまだ馴染みが薄いように思われる。
 日蓮上人が閉じ込められていた土牢や、斬首のために座らされた敷皮石なども、さほど歴史に興味のない人は、わざわざ見に行こうと思わないかもしれない。
 正直、私自身も歴史に詳しいわけではない。高校の日本史の授業は、出席日数ギリギリしか出ず、あとは部室でサボっていたぐらいの人間だ。日蓮上人の話を聞いても、それだけで見に行こうとは思わなかった。
 しかし、たまたま用事で訪れたとき、龍口寺は実は見逃せないお寺だということを発見してしまったのである。

miyata_ryukouji1_03.jpg

■ 鎌倉にたったひとつの五重塔

 私に言わせれば、龍口寺の観光スポットとしての魅力は日蓮上人の聖跡のほかにもまだ4つある。
 まずひとつ目は五重塔の存在である。
 鎌倉の神社仏閣を巡ったことがある人は、あることに気づかなかっただろうか。鎌倉には、大仏や観音さまなどはあっても五重塔が見当たらないことに。
 龍口寺は、鎌倉界隈で唯一五重塔を有するお寺だ。
 山門を過ぎ、本堂を仰ぐとその右奥に木立に囲まれた立派な五重塔の姿を見ることが出来る。見目がいいので、古いものかと思ったら、まだ100年余しか経っていないそうだ。明治43年の竣工だそうだから歴史が深いとは言えないものの、神奈川県でも唯一の木造五重塔で、欅造り銅板葺きの堂々たる風格を漂わせている。

miyata_ryukouji1_04.jpg
miyata_ryukouji1_05.jpg

 魅力のふたつ目は、金に輝く仏舎利塔と、そこからの眺めである。
 私がまだこのあたりに不案内だったころ、湘南江の島駅周辺を散策していて、緑の森のなかからぽこんと頭を出す金色の物体を見つけ、いったいありゃなんだ? と驚いたことがあった。それが仏舎利塔と知ったあとも、あの山の上までどうやって行けばいいのか見当がつかず、しばらく謎のスポットして気になっていた。
 行き方は、龍口寺の境内に入り、本堂の左手の階段を上るのだが、上ってみると金色の先端部の下は白い鏡餅のような形になっていて、エキゾチックなものだなと思ったのである。なんとなく日本ぽくない感じがするではないか。

miyata_ryukouji1_06.jpg

 そして仏舎利塔の位置からは、木々の隙間に相模湾を望むことができる。相模湾の眺望といえば長谷観音が有名だが、ここはもっと海に近い。

miyata_ryukouji1_07.jpg
               (撮影:宮田珠己)

 この2つだけでも鎌倉散策に龍口寺を組み込んで損はないと思うが、私の考える龍口寺の真の魅力はこれだけではない。本題はここからである。

LINE
Twitter
facebook
google+
hatenablog
宮田珠己(龍口寺編)ポートレート
宮田珠己(龍口寺編)
エッセイスト。
ジェットコースター、変なカタチの海の生きもの、巨大仏、ベトナムの盆栽、迷路のような旅館、石などに興味を持ち、好き勝手に執筆。旅が大好きだが、飛行機が苦手で苦悩している。
主な著書は『ジェットコースターにもほどがある』『晴れた日は巨大仏を見に』『ふしぎ盆栽ホンノンボ』『四次元温泉日記』『いい感じの石ころを拾いに』『だいたい四国八十八カ所』『ときどき意味もなくずんずん歩く』『私なりに絶景』『ニッポン47都道府県正直観光案内』など。
著者のご紹介
mr.ブラーン
佐藤淳一ポートレート
乗らずにいられない、懸垂式モノレールの魅力
佐藤淳一
ドボク+動物のかけもち写真家
宮田珠己ポートレート
湘南モノレールはどのぐらいジェットコースターなのか
宮田珠己
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
宮田珠己(続編)ポートレート
5つの面白レールを1日で。ゆかいなのりもの大冒険!
宮田珠己(続編)
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
村田あやこポートレート
路上に潜む異世界を求めて ー湘南モノレール沿線 路上園芸探索ー
村田あやこ
散歩と植物好きの会社員
村田あやこ(続編)ポートレート
湘南モノレールから歩いていける森巡り
村田あやこ(続編)
散歩と植物好きの会社員
村田あやこ(変形菌編)ポートレート
ルーペの向こうのちいさな世界
村田あやこ(変形菌編)
散歩と植物好きの会社員
村田あやこ(大船系植物編)ポートレート
「大船系」植物と玉縄桜~知っていますか?大船生まれの植物たち~
村田あやこ(大船系植物編)
太田和彦ポートレート
大船で飲む
太田和彦
作家。旅と酒をこよなく愛する
八馬智ポートレート
土木構造物としての湘南モノレール鑑賞術
八馬智
ドボクの風景を偏愛する都市鑑賞者
西村まさゆきポートレート
湘南モノレールの昔と今を比べてみる
西村まさゆき
めずらしいのりものに乗るのが好きなライター。
西村まさゆき(続編)ポートレート
開業当時の古写真の場所はいったいどこか探す旅
西村まさゆき(続編)
めずらしいのりものに乗るのが好きなライター。
西村まさゆき(車両基地編)ポートレート
大人のモノレール車両基地見学記
西村まさゆき(車両基地編)
めずらしいのりものに乗るのが好きなライター。
大船ヨイマチ新聞ポートレート
よい街 オーフナ
大船ヨイマチ新聞
大船のフリーペーパー。昼は「良い街」夜は「酔い街」。
皆川典久ポートレート
地形マニアと鉄ちゃんの凸凹乗車体験記〜湘南モノレールに乗って〜
皆川典久
スリバチ状の谷地形を偏愛する地形マニア
皆川典久(続編)ポートレート
湘南モノレールに乗らずに
皆川典久(続編)
スリバチ状の谷地形を偏愛する地形マニア
能町みね子ポートレート
ほじくり湘南モノレール
能町みね子
肩書きに迷いつづけ、自称「自称漫画家」。散歩好き。
ドンツキ協会ポートレート
ドンツキクエスト in 湘南モノレール
ドンツキ協会
ドンツキ協会は東京の路地の町、向島を拠点に、袋小路『ドンツキ』の研究に取り組む団体。
大谷道子ポートレート
湘南モノレール運転士インタビュー 「運転する人どんな人」
大谷道子
ライター・編集者。
井上マサキポートレート
湘南モノレールの「まっすぐ路線図」を鑑賞する
井上マサキ
路線図を鑑賞するライター
井上マサキ(ぶら喜利)ポートレート
ぶら喜利
井上マサキ(ぶら喜利)
路線図を鑑賞するライター
鈴木章夫ポートレート
湘南モノレールバー人図鑑
鈴木章夫
誰かをちょっとだけびっくりさせるのが幸せ。かまくら駅前蔵書室(カマゾウ)室長
二藤部知哉ポートレート
ソラdeブラーンdeラーン
二藤部知哉
沿線在住のんびりブラーンランナー
いのうえのぞみポートレート
湘南フォトレール カメラを持って湘南モノレールに乗ろう!
いのうえのぞみ
モデル・タレントで世界一周を目指すカメラマン
大村祐里子ポートレート
フィルムdeブラーン
大村祐里子
フィルムカメラをこよなく愛する写真家
川口葉子ポートレート
モノレールdeカフェ散歩
川口葉子
都市散歩と喫茶時間を愛するライター、喫茶写真家。
松澤茂信ポートレート
湘南別視点ガイド
松澤茂信
東京別視点ガイド編集長。珍スポットとマニアのマニア。
川内有緒ポートレート
湘南トライアングルをめぐる旅
川内有緒
ノンフィクション作家
田中栄治ポートレート
MonoTube
田中栄治
地上と空のスピード感を追い求めている素人カメラマン
三土たつおポートレート
本物の車内アナウンスが楽しすぎた。
三土たつお
路上のなんでもないものの名前と特徴が知りたいライター
三土たつお(続編)ポートレート
湘南モノレール風景図鑑
三土たつお(続編)
路上のなんでもないものの名前と特徴が知りたいライター
杉浦貴美子ポートレート
食べる!湘南モノレール -湘南「地形菓子」制作奮闘記-
杉浦貴美子
地図・地形好きライター
今泉慎一ポートレート
〝もののふ隊〟駅前砦にあらわる
今泉慎一
旅・歴史・サブカル好き編集者兼ライター
ワクサカソウヘイポートレート
車窓の冒険
ワクサカソウヘイ
文筆業。主にルポとかコントがフィールド。
ワクサカソウヘイ(夜編)ポートレート
夜になると 湘南モノレールは
ワクサカソウヘイ(夜編)
文筆業。主にルポとかコントがフィールド。
半田カメラポートレート
大船観音の劇的楽しみ方
半田カメラ
大仏写真家
遠藤真人ポートレート
ジェットにGO!GO!!
遠藤真人
モノレールに敬礼!鉄道写真バンザイ!
石川祐基ポートレート
湘南モノレール「もじ鉄」旅
石川祐基
グラフィックデザイナー。鉄道と文字が好きな、もじ鉄。
大竹聡ポートレート
腰越で飲む
大竹聡
酒と酒場をこよなく愛するフリーライター
荻窪圭ポートレート
道標をきっかけに江の島まで古道を辿る
荻窪圭
老舗のデジタル系ライター。古道・古地図愛好家。
松本泰生ポートレート
湘南モノレールが見える階段を探して
松本泰生
階段研究家
大山顕ポートレート
湘南モノレールに乗って体長2kmのヤギを描く
大山顕
ドボクフォトグラファー
田代博ポートレート
湘南モノレールと富士山
田代博
富士山遠望鑑定士。ダイヤモンド富士ハンター。
北尾トロポートレート
町中華タウン大船をゆく
北尾トロ
町中華探検隊隊長
喜清みずほポートレート
失われた 記憶をたどる まぼろしの遊園地「江の島龍口園(えのしまりゅうこうえん)」
喜清みずほ
鎌倉観光ボランティアガイド
宮田珠己(龍口寺編)ポートレート
龍口寺の龍と、謎の仏像
宮田珠己(龍口寺編)
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
加門七海ポートレート
江の島怪談闇歩き
加門七海
作家
中野純ポートレート
江の島怪談闇歩き
中野純
負の走光性がある、闇歩きガイド
宮田珠己(空の駅編)ポートレート
湘南江の島駅は、日本一高い駅だった!?〜日本一、地上高が高い駅はどこか?
宮田珠己(空の駅編)
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
モノ喜利(井上マサキ)ポートレート
モノ喜利
モノ喜利(井上マサキ)
めざせ!最優秀ブラーン賞
ヴッパータール空中鉄道座談会ポートレート
ヴッパータール空中鉄道について思いっきり語る
ヴッパータール空中鉄道座談会
ヴッパータール空中鉄道に乗車した人たち
モノ散歩ポートレート
モノ散歩
モノ散歩
沿線の魅力が集結!
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日(宮田珠己)ポートレート
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日(宮田珠己)