江の島への近道 湘南モノレール株式会社

開業当時の古写真の場所はいったいどこか探す旅(1)

top.jpg

湘南モノレールの社内に、モノレール開業当時の様子を残した写真が保存されていた。

写真には、まだ建設途中の橋脚の様子や、完成直後の沿線の様子が残されている。

昭和の雰囲気を色濃く残した建物の上を、颯爽と行き交うモダンなモノレール車両や、広い野原に点々と立ち並ぶ工事中のモノレール橋脚など、興味深い写真が多い。

今から40年以上前に撮影されたこれらの写真をみているうちに、その写真の場所は今どうなっているのかを確かめたくなってきた。

昔の場所を探すツアー

40年前の写真と同じ場所を探す。という主旨に賛同して、スタートの大船駅に集まった探索メンバーは、ライターの宮田珠己さんと井上マサキさん、湘南モノレール広報課の池田里麻子さん。そしてぼく、西村の4人だ。

このメンバーで、気になる古写真とモノレール一日乗車券を持って、実際に探してみることにした。

02.jpg右から宮田さん、井上さん、池田さん(以降敬称略)

まず、最初に探すことになった場所はこちら。

03.jpg
「泉屋」

写真右側に「泉屋」と書かれた商店が写っている。商店には「昭和堂のパン」という看板が見える。おそらくパンなどの食料品をとりあつかう商店だろう。(ちなみに「昭和堂のパン」というのは、横浜にあった製パン業者だ。現在は「ポンパドウル」というベーカリーチェーン店になっている)

橋脚が、撮影者からみてレールの左側についており、先に見える山(?)に向かってまっすぐ伸びていることがわかる。

この「泉屋」は今でも営業しているのか。どうなのか? 気になるところだ。

この写真のポイントは、山に向かって左側に橋脚のあるレールが、道路にそってまっすぐ伸びているというところだろう。湘南モノレールは、全般的にカーブが多い。レールがまっすぐ延びている箇所は限られている。

西村「湘南モノレールで、道路の上をレールがまっすぐ延びている場所といえば......どのへんがありますか?」

池田「まず思い浮かぶのは、大船駅の次の駅、富士見町から湘南町屋の間でしょうか」

宮田「富士見町から湘南町屋までは、いまでは、両側にびっしり住宅が建ってますけど、たしかに道路の上をまっすぐレールが走ってる」

西村「富士見町から湘南町屋の方向を見ると、たしかに山がありますね」

井上「まずは行ってみてみましょう」

というわけで、我々はモノレールに乗り込んで、富士見町駅まで向かった。

いや、これは違う!

大船駅からモノレールに乗り込み、外の様子をうかがっていると、あることに気づいた。

04.jpg山に向かって橋脚が右側だ!

確かに、富士見駅のレールは山に向かってまっすぐではあるけれど、橋脚が、山に向かって右側についているのだ。

西村「写真の通りであれば、山に向かって橋脚が左にないといけないんですが、このあたりは全部右側についてますね」

池田「そうなると、道路の上をまっすぐなレールが走ってる場所といえば......」

宮田「その先の山を越えた向こう側、湘南町屋から湘南深沢までの間もまっすぐな区間ありますね」

西村「なるほど、山の向こう側から見れば橋脚が左側というわけですね」

05.jpg
山を挟んで、両側にまっすぐなレールが伸びている。

湘南モノレールは、富士見町駅から湘南深沢に至るまでの間に、ちょっと小高くなっている山を超える。その山をどちら側から見るかで、橋脚の向きが違ってくる、ということになる。

というわけで、富士見駅で降りるのは取りやめ、湘南深沢駅まですすむことに。

06.jpg湘南モノレール、湘南深沢駅に到着

さっそく、山に向かってみると、橋脚が左側に見える。しかも、道路の上にあるレールもまっすぐだ。

07.jpg写真とレールを見比べてみる

08.jpg橋脚の位置と写真を合わせてみると......

09.jpgあれ?

ここで、古写真を見比べていて、あることに気づいた。

西村「あーっ! ちょっと見てください。写真の泉屋の横にある蔵っぽい建物の切妻屋根とおんなじやつがそのまま建ってますよ!」

え、どこどこ? と集まる探索メンバー。

10.jpgうぉー、ホントだ!

11.jpgほぼ同じじゃないですか?

外壁はかわっているものの、屋根がそっくりだ。この建物が、写真の建物と同じと考えると、泉屋は現在、駐車場となっており、跡形もない。

泉屋の横の建物をよく見ると、サインポールがあり、理髪店であった。

12.jpg蔵じゃなかった

理髪店だと思って、改めて昔の写真を見てみると、たしかに昔の写真にもサインポールのようなものがちょこっとだけ写っている。

13.jpg
よくみるとサインポールが写ってるな

この理髪店、現在でも営業はしているようだが、訪れた日はあいにく休みであった。

しかし、あたりの様子がガラリと変わっているなか、モノレールと、この建物だけが当時とほぼ同じ形で残っているのがなんとも面白い。

知らない人だらけのパーティーで友人を見つけたときみたいな、うれしさがある。

石井さんに出会う

理髪店のすぐ近くで、玄関の掃除をしている男性を見かけた。もし、このあたりの住人であれば、泉屋がどうなったのか知っているかもしれない。話をきいてみた。

14.jpg捜査っぽいけど、昔話を聞いてるだけです

男性は、ここにお住まいの元教師の石井さん(80)で、実は地域の歴史をまとめた冊子を作っておられる、偶然にも地域の歴史に詳しい方だった。

15.jpg偶然にも地域の歴史に詳しい方だった

石井さんの話によると、泉屋は、確かにあったことは覚えているけれど、閉店してからすでかなり時間が経っているため、詳しいことはわからないという。

ただ、写真の場所は、やはり湘南深沢駅から山の方を向かって見た写真であっているらしい。

泉屋があった駐車場や、理髪店から道路を挟んだ向かい側は、現在、だだっ広い空き地になっているが、モノレールができた頃は、国鉄の職員住宅があり、さらにその前は、兵器工場だったという。

石井さん「工場は海軍の工場でね、女学生が機雷なんか作っていたらしいね」

西村「学徒動員というやつですね、石井さんは、ずっとここにお住まいなんですか?」

石井さん「そうです、子供の頃からここに住んでます」

西村「モノレールが出来る前は、交通機関はどうしてたんですか?」

石井さん「モノレールができるまではみんなバスに乗ってたけどね、もっと昔の子供のころは、大船の病院まで歩いて行ってたよ」

80歳の石井さんが子供の頃なので、今から70年前。太平洋戦争が終わった直後ぐらいのことだろうか。

湘南深沢から大船まで、徒歩だとおそらく40分ぐらいはあるだろう。ちょっと気軽に......というわけにはいかない距離だ。

石井さん「風景もずいぶんかわったけど、モノレールができて、便利になったね」

たしかに、40分かけて病院まで歩くことを考えると、便利になったには違いない。

image16.jpeg
海軍の工場があった

ひとまず、最初の写真の場所は判明した

我々が「泉屋」と名付けた写真。場所は湘南深沢駅から、湘南町屋駅方面に向かって、撮った写真ということがわかった。

泉屋そのものはすでに無くなっていたものの、隣の理髪店の建物は残っていた。

こんなに簡単に特定できてしまって大丈夫だろうか? はっきりいって他の写真もサクサクっと見つかってしまうのではないか?

などと、軽々しく考えていたのが、甘い考えだったということは、後々嫌というほどわかるのであるが、ひとまずは、ここまで。

次回は「立位体前屈」の場所を探せ。です。

LINE
Twitter
facebook
google+
hatenablog
西村まさゆき(続編)ポートレート
西村まさゆき(続編)
ライター。鳥取県倉吉市出身、東京都中央区在住。めずらしいのりものに乗ったり、地図で見た気になる場所に行ったり、辞書を集めたりしています。著作『ファミマ入店音の正式なタイトルは大盛況に決まりました』(笠倉出版社)ほか。移動好き。好物は海藻。
Twitter:https://twitter.com/tokyo26
著者のご紹介
mr.ブラーン
森川天喜(鎌倉殿と十三人の御家人)ポートレート
「鎌倉殿と十三人の御家人」のゆかりの地を歩く
森川天喜(鎌倉殿と十三人の御家人)
フリージャーナリスト
佐藤淳一ポートレート
乗らずにいられない、懸垂式モノレールの魅力
佐藤淳一
ドボク+動物のかけもち写真家
宮田珠己ポートレート
湘南モノレールはどのぐらいジェットコースターなのか
宮田珠己
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
宮田珠己(続編)ポートレート
5つの面白レールを1日で。ゆかいなのりもの大冒険!
宮田珠己(続編)
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
村田あやこポートレート
路上に潜む異世界を求めて ー湘南モノレール沿線 路上園芸探索ー
村田あやこ
散歩と植物好きの会社員
村田あやこ(続編)ポートレート
湘南モノレールから歩いていける森巡り
村田あやこ(続編)
散歩と植物好きの会社員
村田あやこ(変形菌編)ポートレート
ルーペの向こうのちいさな世界
村田あやこ(変形菌編)
散歩と植物好きの会社員
村田あやこ(大船系植物編)ポートレート
「大船系」植物と玉縄桜~知っていますか?大船生まれの植物たち~
村田あやこ(大船系植物編)
太田和彦ポートレート
大船で飲む
太田和彦
作家。旅と酒をこよなく愛する
八馬智ポートレート
土木構造物としての湘南モノレール鑑賞術
八馬智
ドボクの風景を偏愛する都市鑑賞者
西村まさゆきポートレート
湘南モノレールの昔と今を比べてみる
西村まさゆき
めずらしいのりものに乗るのが好きなライター。
西村まさゆき(続編)ポートレート
開業当時の古写真の場所はいったいどこか探す旅
西村まさゆき(続編)
めずらしいのりものに乗るのが好きなライター。
西村まさゆき(車両基地編)ポートレート
大人のモノレール車両基地見学記
西村まさゆき(車両基地編)
めずらしいのりものに乗るのが好きなライター。
大船ヨイマチ新聞ポートレート
よい街 オーフナ
大船ヨイマチ新聞
大船のフリーペーパー。昼は「良い街」夜は「酔い街」。
皆川典久ポートレート
地形マニアと鉄ちゃんの凸凹乗車体験記〜湘南モノレールに乗って〜
皆川典久
スリバチ状の谷地形を偏愛する地形マニア
皆川典久(続編)ポートレート
湘南モノレールに乗らずに
皆川典久(続編)
スリバチ状の谷地形を偏愛する地形マニア
能町みね子ポートレート
ほじくり湘南モノレール
能町みね子
肩書きに迷いつづけ、自称「自称漫画家」。散歩好き。
ドンツキ協会ポートレート
ドンツキクエスト in 湘南モノレール
ドンツキ協会
ドンツキ協会は東京の路地の町、向島を拠点に、袋小路『ドンツキ』の研究に取り組む団体。
大谷道子ポートレート
湘南モノレール運転士インタビュー 「運転する人どんな人」
大谷道子
ライター・編集者。
井上マサキポートレート
湘南モノレールの「まっすぐ路線図」を鑑賞する
井上マサキ
路線図を鑑賞するライター
井上マサキ(ぶら喜利)ポートレート
ぶら喜利
井上マサキ(ぶら喜利)
路線図を鑑賞するライター
鈴木章夫ポートレート
湘南モノレールバー人図鑑
鈴木章夫
誰かをちょっとだけびっくりさせるのが幸せ。かまくら駅前蔵書室(カマゾウ)室長
二藤部知哉ポートレート
ソラdeブラーンdeラーン
二藤部知哉
沿線在住のんびりブラーンランナー
いのうえのぞみポートレート
湘南フォトレール カメラを持って湘南モノレールに乗ろう!
いのうえのぞみ
モデル・タレントで世界一周を目指すカメラマン
大村祐里子ポートレート
フィルムdeブラーン
大村祐里子
フィルムカメラをこよなく愛する写真家
川口葉子ポートレート
モノレールdeカフェ散歩
川口葉子
都市散歩と喫茶時間を愛するライター、喫茶写真家。
松澤茂信ポートレート
湘南別視点ガイド
松澤茂信
東京別視点ガイド編集長。珍スポットとマニアのマニア。
川内有緒ポートレート
湘南トライアングルをめぐる旅
川内有緒
ノンフィクション作家
田中栄治ポートレート
MonoTube
田中栄治
地上と空のスピード感を追い求めている素人カメラマン
三土たつおポートレート
本物の車内アナウンスが楽しすぎた。
三土たつお
路上のなんでもないものの名前と特徴が知りたいライター
三土たつお(続編)ポートレート
湘南モノレール風景図鑑
三土たつお(続編)
路上のなんでもないものの名前と特徴が知りたいライター
杉浦貴美子ポートレート
食べる!湘南モノレール -湘南「地形菓子」制作奮闘記-
杉浦貴美子
地図・地形好きライター
今泉慎一ポートレート
〝もののふ隊〟駅前砦にあらわる
今泉慎一
旅・歴史・サブカル好き編集者兼ライター
ワクサカソウヘイポートレート
車窓の冒険
ワクサカソウヘイ
文筆業。主にルポとかコントがフィールド。
ワクサカソウヘイ(夜編)ポートレート
夜になると 湘南モノレールは
ワクサカソウヘイ(夜編)
文筆業。主にルポとかコントがフィールド。
半田カメラポートレート
大船観音の劇的楽しみ方
半田カメラ
大仏写真家
遠藤真人ポートレート
ジェットにGO!GO!!
遠藤真人
モノレールに敬礼!鉄道写真バンザイ!
石川祐基ポートレート
湘南モノレール「もじ鉄」旅
石川祐基
グラフィックデザイナー。鉄道と文字が好きな、もじ鉄。
大竹聡ポートレート
腰越で飲む
大竹聡
酒と酒場をこよなく愛するフリーライター
荻窪圭ポートレート
道標をきっかけに江の島まで古道を辿る
荻窪圭
老舗のデジタル系ライター。古道・古地図愛好家。
松本泰生ポートレート
湘南モノレールが見える階段を探して
松本泰生
階段研究家
大山顕ポートレート
湘南モノレールに乗って体長2kmのヤギを描く
大山顕
ドボクフォトグラファー
田代博ポートレート
湘南モノレールと富士山
田代博
富士山遠望鑑定士。ダイヤモンド富士ハンター。
北尾トロポートレート
町中華タウン大船をゆく
北尾トロ
町中華探検隊隊長
喜清みずほポートレート
失われた 記憶をたどる まぼろしの遊園地「江の島龍口園(えのしまりゅうこうえん)」
喜清みずほ
鎌倉観光ボランティアガイド
宮田珠己(龍口寺編)ポートレート
龍口寺の龍と、謎の仏像
宮田珠己(龍口寺編)
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
加門七海ポートレート
江の島怪談闇歩き
加門七海
作家
中野純ポートレート
江の島怪談闇歩き
中野純
負の走光性がある、闇歩きガイド
髙山英男ポートレート
暗渠deブラーン ~暗渠マニアが味わう湘南モノレール沿線
髙山英男
中級暗渠ハンター(自称)。
吉村生ポートレート
暗渠deブラーン ~暗渠マニアが味わう湘南モノレール沿線
吉村生
暗渠マニアックス
宮田珠己(空の駅編)ポートレート
湘南江の島駅は、日本一高い駅だった!?〜日本一、地上高が高い駅はどこか?
宮田珠己(空の駅編)
旅とジェットコースターと変なカタチの海の生きものを愛するエッセイスト
西村まさゆき(駅名編)ポートレート
湘南モノレール「駅名」ルーツをたどる旅
西村まさゆき(駅名編)
石山蓮華ポートレート
いい線いってる夜
石山蓮華
電線愛好家
中島由佳ポートレート
いい線いってる夜
中島由佳
ゴムホースマニア
加賀谷奏子ポートレート
いい線いってる夜
加賀谷奏子
サンポー編集部ポートレート
しょもたんの完全一致を探す散歩
サンポー編集部
散歩の横好き集団
中野純(鎌倉大横断編)ポートレート
鎌倉大横断ミッドナイトハイク
中野純(鎌倉大横断編)
負の走光性がある、闇歩きガイド
森川天喜ポートレート
湘南モノレール全線開通までの全記録
森川天喜
フリージャーナリスト
しょもたんポートレート
モノレールの運転士さんや駅員さんの話をきいてみよう!
しょもたん
湘南モノレールのマスコットキャラクター。
森川天喜(今昔写真撮影隊)ポートレート
湘南モノレール沿線 今昔写真撮影隊!
森川天喜(今昔写真撮影隊)
フリージャーナリスト
モノ喜利(井上マサキ)ポートレート
モノ喜利
モノ喜利(井上マサキ)
めざせ!最優秀ブラーン賞
ヴッパータール空中鉄道座談会ポートレート
ヴッパータール空中鉄道について思いっきり語る
ヴッパータール空中鉄道座談会
ヴッパータール空中鉄道に乗車した人たち
モノ散歩ポートレート
モノ散歩
モノ散歩
沿線の魅力が集結!
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日(宮田珠己)ポートレート
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日
4コマ劇場 Mr.ブラーンの休日(宮田珠己)