江の島への近道 湘南モノレール株式会社

湘南トライアングルをめぐる旅(1)

湘南トライアングルを制覇する


「もうすぐお空を飛ぶ電車がやってくるよ!」


 駅のプラットホームでそう言うと、娘(3歳)はキョトンとした瞳で私を見つめた。しばらく待っていると、本当に一台の電車が、すいーっと空を滑るようにしてホームに飛び込んできたので、娘は「わあ!」と声をあげた。

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 その日、私たちは湘南を旅していた。
 メンバーは、私、I君(夫)、ナナオ(娘)の3人。目的は1日にして湘南トライアングルを制覇することである。
 ん? 「湘南トライアングル」なんて聞いたことないって? 
 ええ、たったいまつくりあげた呼称なんです、すみません。なんのことはなく、地図をなぞってみれば、今回の旅のルートが大きな三角形を描く、それだけの話である。
 旅の起点となるのは大船駅。
 そこから湘南モノレールに乗って海に向かって南下、終点の江の島へ。その後は江ノ電で海岸沿いをずんずんと鎌倉方面へ。最後に鎌倉でJRに乗りかえて一路北上、起点の大船駅に戻ってくる......と、ほうら、大きな三角形のできあがり(ちょっといびつだけど!)。
 まあ、もっと現実的かつシンプルに言うと「鎌倉・江ノ島パス」という1日乗車券(700円)をこれ以上ないほど貪欲に活用してみようという企画である。

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空とぶ電車を目指す


 「今日はみんなでおでかけしようね。すぐに着替えよう」と目を覚したばかりのナナオに告げると、「やったー!」と元気良く布団から出て、お気に入りのTシャツを身につけた。娘は、赤ちゃんの頃から取材やら旅行やらに引きずりまわされてきたので、3歳にして旅が大好きなのだ。
 1時間ほど電車に揺られてJR大船駅までやってくると、さっそく「鎌倉・江ノ島パス」(700円)を購入。10時半には、トライアングルの出発点となる湘南モノレールのホームに立つ。
 しかし、すでに1時間以上も電車に乗ってきた娘は、もはや電車には飽き飽きしていたようで、まだなにひとつ始まらないうちから、「もうヤダ、ヤダ、でんしゃ、つかれた!」と言い出した。
 うわ、まずいぞ。まだイヤイヤ期を引きずっている3歳児の機嫌を損ねると、この後に待っているのは悲劇しかない。
「もうすぐお空を飛ぶ電車が来るよ!」
「そう、そう! あっちを見てごらん」
 I君とふたりで、必死に娘の気をそらせる。すると、「イヤイヤ」は一時停止。2分ほどでホームの先に開けたなにもない空間から、飛ぶように電車がやってきたので、娘は飛び跳ねて喜んだ。
「わあ、スゴイ! ナナたち、おそらのうえにいくの? すごいねえ、おそらのでんしゃだねー!」

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 まったく3歳児の気分は、山の天気以上に変わりやすいのだ。



 モノレールは大きくスイングしながら、大船のビルの合間をかなりの勢いで駆け抜けてゆく。娘は車窓にへばりつきながら、「スゴイ、スゴイ!」と繰り返している。

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「けっこう揺れるんだなあ! 確か千葉モノレールは、こんなに揺れないと思うよ」
とI君は驚いたように言った。彼は、何を隠そう千葉モノレールの沿線で育った。だから、モノレールの経験値は平均的な日本人よりかなり上なのだ。
「湘南モノレールは吊り下がってる(※懸垂式)からじゃない? きっと空中でブラブラしてるから、そのぶんよく揺れるんだね」
 私が当てずっぽうでそう言うと、「うん、そうだ。確かに千葉モノレールはレールが下にあるタイプ(※跨座式)だったと思う」と納得していた。しかし、のちに調べてみると千葉モノレールも、湘南モノレール同様に日本で数少ない懸垂式モノレールであった。
 そんなふうに夫婦で無知をさらしている間にも、車窓の景色はどんどん移り変わり、車窓には緑がもりもりと増えていった。
 そして大船から4駅目、西鎌倉駅でモノレールを下車した。

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川内有緒
趣味は旅とアートスポット巡りとD.I.Y.。いま小さな山間の集落に自作の小屋をつくっています。著作に『パリでメシを食う。』(幻冬舎)ほか。バングラデシュの吟遊詩人たちを追った「バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌」(幻冬舎)で新田次郎文学賞を受賞。東京の恵比寿でGallery and Shop山小屋を運営中。一児の母。
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